「三刀流」のアクション女優・宮原華音が振り返るプロのリング 相手の膝蹴りに「このままだとやられる。行かなきゃ」 (3ページ目)

  • キンマサタカ●取材・文 text by Kin Masataka

 最初にリングに立ったのは昨年1月のアマチュアの大会で、右ミドルキックで対戦相手を開始わずか15秒でKO。ブランクはあったものの、空手で実績を残してきた宮原にとっては当たり前とも言える結果だった。

 素質を見込まれた宮原は、プロの選手としてRISEの本興行に出場することになる。現役のラウンドガールがリングに立てば話題になる、という興行側の目論見もあったことだろう。その日からトレーニングの強度は格段に上がった。

 空手と違ったのは、パンチとキックをよけることの重要さだ。もともと目がいい宮原は、フットワークを磨く練習に時間を割いた。

 そして、実戦をイメージしたトレーニングで教えられたのは、フィニッシュの大切さだ。闇雲にパンチを繰り出すのではなく、何をしたいか瞬時に判断して攻撃する。相手が攻撃してくる瞬間も下がるだけでなく、「この次にどうするか」と考える。どんな一瞬の動作も、すべては相手をKOするための布石でしかない。

 それは、宮原が仮面ライダーの撮影現場で学んだアクションの極意と通底していた。キックボクシングというスポーツの魅力にとりつかれるまで、長い時間はかからなかった。

【プロデビュー戦は39秒KO】

「初めてのプロの試合はあっという間のようだけど、長いような気もしました」

 興奮と同時に、緊張を楽しむ余裕もあった。最初に、相手の足を封じるつもりでラッシュをかける。だが、相手の膝蹴りがモロにみぞおちに入り、思わず目の前が真っ白になる。

「膝蹴りを食らうのが初めてで、あんなに痛いとは思いませんでした。でも、それでスイッチが入ったのかもしれません。『このままだとやられる。行かなきゃ』って」

 トレーニング中に顔面を殴られることはあったが、膝蹴りがこんなに痛いとは思っていなかった。パンチ力のある相手にひるんだら一気に押し切られる。実際に相手は、宮原の弱気を見抜いたのか攻勢を強めた。

 実は、試合前は「得意のハイキックで倒したい」と宣言をしていた。だが、相手はそれを封じる目的で懐に入り、インファイトに持ち込もうとしていた。ただ、宮原は真っ向から打ち合うことを選んだ。宮原には"強み"があったからだ。

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