クリープハイプ・尾崎世界観が「音」と共に思い出す1990年代のヤクルト「自分がファンだということは、内緒にしていた」 (4ページ目)

  • 白鳥純一●文 text by Shiratori Junichi
  • 山口直也●撮影 photo by Yamaguchi Naoya

――1990年代のセ・リーグは、ヤクルトと巨人が優勝争いを繰り広げていました。FA選手を獲得する長嶋巨人と、緻密なデータを駆使しながら、自由契約になった選手を再生する野村ヤクルトの対照的なチームカラーも印象的でした。

「野村克也監督がチームを率いていた1995年、97年、そして若松監督が就任した2001年にも日本一になりましたが、トレードで来た田畑一也投手、小早川毅彦選手のように他球団を解雇された選手が出てきて、再び活躍する雰囲気も好きでしたね。当時は、選手の経歴や『野村再生工場』という言葉の意味をまだそこまで理解していなくても、強さの中にある選手のストーリーに、子供ながらに惹かれるところがあったんです」

――その後、低迷期を乗り越えたチームは、1993年以来のセ・リーグ連覇を成し遂げました。

「1990年代の強い時期にクローザーを務めていた高津臣吾さんが監督になり、2年連続優勝を果たすまでを見て、『一周した』という感覚があります。『2022年の優勝を見た子供たちが、将来はどんなチームを目にするんだろう』と想像を掻き立てられました。自分が子供の頃に見ていた1993年の日本一の時にも、広岡達朗監督が率いた1978年のチームと比べていた人がいたのかなと考えたりもします。見てきた時代によって、優勝や日本一の捉え方が変わるのは面白いですね」

(後編:「人生とプロ野球が重なり合う瞬間がある」。大ファンのヤクルトがピンチを無失点で抑えたら「別れた彼女に連絡してみよう」>>)

【プロフィール】
尾崎世界観(おざき・せかいかん)

1984年東京都生まれ。2001年にロックバンド「クリープハイプ」を結成し、ボーカルとギターを担当。2012年メジャーデビュー。2016年、初の小説『祐介』を刊行。2020年12月には小説『母影』が芥川賞候補となって注目を集めた。熱心なヤクルトファンとしても知られている。

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「本当なんてぶっ飛ばしてよ」

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【著者プロフィール】
白鳥純一(しらとり・じゅんいち)

1983年東京都生まれ。行政書士業務の傍らでWEBサイト『キングギア』で、本格的に執筆活動を開始。その後、海外スポーツの取材やインタビュー記事を中心に執筆。『web Sportiva』などに記事を掲載している。

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