「大学卒業までひとりあたり平均2200万円」は高いのか。教育費問題を投資の観点から考える (4ページ目)
奥野「ただ、投資をする必要があるのは個人だけではないんだ。たとえば、確かに才能が豊かで、世界に通用する人間になれる可能性を持った子供の家庭が貧しいから、レベルの低い教育しか受けられないってことになったら、それは国にとって大きな損失になってしまうよね。
だから、たとえ家庭が貧しくても優秀な人間だったら、一定の資格試験を受けさせるなどして、それに合格したら国がある程度バックアップして、海外のエリート校で学ばせるといったことに、もっと予算を割いてもいいのではないかと思うよ。
そんなことを言うと、『財源はどうするんだ』とすぐに噛みついてくる人がいるんだけど、国から私立大学に毎年交付されている補助金って、結構な金額になるんだから、その一部を回せばいい。
ちなみに2021年度の交付学校数は、大学が581校、短期大学が272校、高等専門学校が2校で、これらに交付されている金額が総額で2925億496万6000円もあるんだ。子供の数がどんどん減って、『大学全入時代』なんて言われているんだけど、それは逆の見方をすると、大学の数はもっと減らしてもいいということになる。
大学の数をもっと減らして、補助金の一部を海外で学びたがっている優秀な子供の奨学金、それも返済の必要がない奨学金としてつけてあげれば、世界で活躍できる人間をもっと増やせるはずなんだ。
もっと、もっと若い人たちに対して投資する国にならないと、その国の発展は期待できなくなってしまう。今の日本は、まさにその正念場を迎えているんじゃないかな」
奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC) 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実践する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は4000億を突破。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』『投資家の思考法』など。
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