スーパースター必ずしも「富裕層」にあらず。日本人の収入が増えない理由を解き明かす (3ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

「いいものを安く」の呪縛

奥野「でも、今はモノが余っているから、安いモノをたくさんつくって世界中に輸出する、というビジネスモデルは、少なくとも日本国内においては成り立たなくなってきている。海外に目を向けても、日本よりも安い値段で輸出する他の国があるから、メイド・イン・ジャパンはあまりお呼びではない。

 もちろん、この円安で再び日本が工業国に戻ってしまうことも起こりうるのだけれども、日本が先進国を標榜するならば、本来は値段が高くても誰もがほしがるような、高付加価値な商品をつくるべきなのだと思うよ。

 たとえばiPhoneを例にとると、この7月にiPhone13が2~3万円程度の値上げをしたばかりなのに、9月から発売された最新機種のiPhone14は、さらに値上げしてきたよね。これ、やっぱり付加価値の高い商品だからできることなんだ」

由紀「でも、安いほうが売れるんじゃないですか」
鈴木「そうそう。安くて品質が良いものこそが正義だって思うのですが......」
奥野「この10年で、世界的に『富裕層』と呼ばれる人の数が、結構増えているんだ」
鈴木「来季は年俸3000万ドルにアップする大谷翔平選手をはじめ、スポーツ界にもそんなスーパースターがいっぱいいそうだ」

奥野「大谷選手が富裕層に含まれるかどうかは別にして、富裕層というのは高い報酬を得ている人という意味ではなくて、多くの資産を持っている人のことを指すんだ。

 クレディスイスという金融機関の調査資料に『Global Wealth Databook』というのがあるんだけれども、それを見ると、この10年で、たとえば総資産1000万ドル(約15億円)以上を持っている人の数は、全世界だと85万人から250万人に増加しているし、アメリカは40万人から150万人に増えている。ということは、全世界の富裕層の6割が米国に集中していることになるんだね。

 では、日本はどうなのかというと、同じ期間で5万6000人だったのが6万人だから、増えているとはいえ微増。

 もう少しハードルを下げて100万ドル(約1億5000万円)以上で見ると、全世界では2500万人が5600万人、米国は1100万人が2400万人になり、いずれも倍増している。でも日本は310万人が340万人になっただけなので、それほど増えてはいないのだけれども、それでも300万人強が1億円以上を持っているのだから、お金持ちは結構いるんだよ」

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