カタールW杯にも見える世界の経済成長。日本が相対的に貧しくなっているのはなぜか (3ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

お金儲けがヘタな日本人

奥野「バブル経済の頃は『24時間戦えますか』なんてCMソングもあったくらいだから、それから30年以上が経って、働き方も随分と変わってきたのかもしれないけど、おそらくそれが決定的な要因ではないだろうね。今後、DX化が進めば、人の手を煩わせる作業が機械化できるから、人間の働く時間を今以上に減らすことができて、なおかつ今以上の作業量がこなせるようになる。働かなくなるのは世界的な傾向かもしれない。

 どちらかというと、由紀さんの答えのほうが近いかもしれないね。お金儲けがヘタな日本人。言い方を変えると、持っているお金を投資に回そうとしない日本人というところかな。

 日本の個人金融資産は、2022年6月末時点で2007兆円あるんだけど、このうち現預金の占める比率は54.9%。株式が9.9%で、投資信託が4.3%となっている。

 じゃあ、アメリカはどうなのかというと、現預金比率は13.7%で、株式等が39.8%、投資信託が12.6%だから、日本とは正反対という印象を受ける。

 そしてユーロ圏は、米国と日本の中間的なイメージで、現預金が34.5%、株式等が19.5%、投資信託が10.4%となっている。

 銀行など金融機関への貯金が中心になる現預金なんて、特に日本はゼロ金利が長かったから、ここにたくさんのお金を置いといても、利息なんてほとんど入ってこない。

 でも、株式で運用すれば、配当だけでなく値上がり益も得られるから、より大きなリターンを得ることが期待できる。それはつまり『金融所得』という名の所得を増やしたのと同じことになるんだ。

 今、岸田文雄首相が一所懸命に言っている『資産所得倍増計画』というのは、『貯蓄から資産形成へ』という流れを加速させることによって、国民所得を豊かにするのが狙いなんだよ」

由紀「でも、いくら株式などで運用するとしても、株価が上がらなければ豊かになりませんよね」
鈴木「そうそう。人口も減るって言うし、経済が活性化しなかったら株価も上がらないんじゃないですか。そこをどう考えればいいんでしょうか」

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る