プロ野球12球団の変遷が映し出す日本経済。起業家が育たないのはなぜか (3ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

もっと親会社が変化してもいい

奥野「でも、一番の理由は、由紀さんが言うように利用客を増やすためなんだ。それぞれの鉄道沿線に野球場があれば、その鉄道を利用して人が移動し、観戦しに来てくれる。こうして利用客が増えれば、鉄道会社の売上も増える。

 もっと言えば、鉄道会社のビジネスは電車を動かして人や荷物を運ぶだけでなく、その沿線に百貨店、住宅、娯楽施設などを企画して街づくりを進め、それらとの相乗効果で、さらに鉄道利用者を増やす狙いがあったんだ。こうして人を集めるための広告効果として、プロ野球がひと役買ったとも考えられるよね。

 でも、時代は変わっていく。いつまでも鉄道会社が親会社として球団運営をする時代ではなくなり、国鉄はヤクルトに、西鉄は太平洋クラブ→クラウンライターという変遷を経て、同じ鉄道会社の西武鉄道に、南海はダイエーを経てソフトバンクに、阪急と近鉄はオリックスに再編され、楽天が新球団を設立したんだ。

 でも、僕の本音を言うと、『もっと大きく変わっていてもいいんじゃないの?』と思うんだ。

 たとえばアメリカの場合、今から30年前にはAmazonもGoogleも存在していなかったのに、両社ともそれぞれの分野で世界の覇権を握っているでしょ。アメリカ経済の強さは、まさにこうした企業のダイナミズムに支えられていると思うんだよ。

 日本の企業が今よりも、もっともっとダイナミズムに溢れていたら、たとえば読売や阪神、中日、ロッテ、日ハムのように、日本のバブル経済がピークだった時から、まったく変わっていないチームのオーナー企業が、根こそぎガラッと変わっていた、なんてことも十分に考えられるよね」

鈴木「確かに読売とか中日は新聞社でしょ。うちもそうだけど、新聞なんて取っていないし。これから先、経営が厳しくなった企業は、球団を手放すなんてことがあるかも」
由紀「ネット系で有名な会社ばかりになるかもしれないわねー。GMOジャイアンツとか、サイバーエージェント・ドラゴンズとかね」

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