井上尚弥は「領域展開」を使っている? いとこで漫画家・浩樹が『呪術廻戦』で紐解く王者の強さ (3ページ目)
【ボクシングでもあるマイフレンド感】
──確かに伏黒は秘めた才能を持ちながらも、それを解放するための本気を出すことができていませんでした。
「そこは共感する部分があります。僕も高校生の頃から、ボクシングの『センスがある』『ポテンシャルが高い』と周りに言われてたんですけど、それをどう引き出せばいいのかわからなかったんです。なので当時は、『おちょくられている』と感じて本気では捉えていませんでした。でも、それから10年経っても評価は変わらず、尚弥も『気づいてないだけだ』と言い続けてくれていたので、『あながち間違いじゃないのかも』と思い始めたんです。ただ、そう気づいた時には現役をやめていたんですけどね(笑)」
──そこまで認めていた井上選手から、漫画家の道に進むという選択に対して何か言われなかったんですか?
「いまだに『もったいない』って言われますよ(笑)。それまでも時々、『漫画は(現役を)やめてからでも描けるじゃん』『(ボクシングを)やりながら描けないの?』と言ってくれていて。気持ちが揺らぐこともあったんですけど、ボクシングだけを集中してやってきたので、漫画でも中途半端な考えでは上には行けないことはわかっていましたから、漫画を描くならその世界だけに身を置こうと。そう決めたんです」
──ボクシングひと筋でやられてきたからこその決断だったんですね。昨年まで現役だった浩樹さんの視点から、面白かったバトルシーンを挙げるとしたら?
「打撃系でいうと、(呪術高専の)東京校と京都校の交流会での虎杖&東堂 葵(とうどう・あおい)vs花御(はなみ)の一戦もよかったですし、禪院真希(ぜんいん・まき)のバトルもすごかったです。呪力がないのにあの体術! あれはヤバいですね」
──前者だと、殴り合ったり共闘するなかで、東堂が虎杖の悪癖を見つけて指摘するなど友情が芽生えていました。ボクシングでも、試合で拳を交えることで、東堂が言う「マイフレンド」になることはあるのでしょうか。
「ありますね。もちろん相手の人生までわかるわけではないですが、『ボクシングという競技に真っ直ぐで、真剣に取り組んできたんだな』というのは伝わってくるんです。そういう部分に共感して称え合うことはあります。試合後も、お客さんの拍手や歓声を聞くと、『ふたりで盛り上げたんだな』という気持ちになりますし、お互い腫れた顔で医務室に行って、途中で鉢合わせた時にちょっとニヤけ合ったりとか。そこは"マイフレンド感"があるかもしれません」
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