池江璃花子、笑顔の8日間。4冠達成で「能力はひとつも錆びていない」
「いずれは、自分の日本記録もしっかり狙っていけるかなと思います」
池江璃花子(ルネサンス)は、前向きなコメントで怒涛の8日間を締めくくった。
2019年2月の白血病公表から、闘病期間を経て20年8月に1年7カ月ぶりの実戦復帰を果たすと、そこからわずか8カ月で今回の日本選手権に出場。池江は8日間11レースを泳ぎ、出場した4種目すべてで優勝を飾った。彼女の精神力の強さや水泳選手としての素質を改めて認識する大会となった。
4種目目の50m自由形の入場では、気合い入ったガッツポーズを見せた池江璃花子 復帰後から指導をしている西崎勇コーチとの大会前の目標はこうだった。
「一緒に練習を始めてからは、『東京五輪を目指そう』という会話は一回もしていません。もちろん五輪選考会にはチャレンジしようかという話は出ていましたが、日本選手権の出場権を取れた時は、一番に返り咲くことを目標にしました。大会直前の合宿からは、『笑顔を絶やさず練習をして、試合をエンジョイしよう』という目標を立てて練習をしていました」
池江が出場したのは、100mバタフライ、100m自由形、50mバタフライ、50m自由形の4種目だが、この中で、非五輪種目の50mバタフライが復帰後の成績を見ても優勝できる可能性があり、そこを目指していたという。
ほかの3種目に関しては「優勝できるとはまったく思わなかった」という状態。東京五輪出場の可能性があるとすれば400mフリーリレーだったが、その派遣標準記録は54秒42。このタイムは池江にとって「リレーメンバーになれる4位以内に入れるかどうか。派遣標準を切れるかどうか」というのが正直なところだった。
しかし池江は、最初の種目だった100mバタフライから力強い泳ぎを見せた。予選を58秒86で2位通過すると、準決勝は58秒48まで上げた。3位での決勝進出だったが泳ぎはリラックスしていた。水と戦うのではなく、その間をスルリとすり抜けていくような柔らかさがあった。
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