競泳のヒロイン大橋悠依が手に入れた強さ。初の世界で大きく成長した
東京五輪&パラリンピック
注目アスリート「覚醒の時」
第13回 競泳・大橋悠依
世界選手権 200m個人メドレー(2017年)
アスリートの「覚醒の時」――。
それはアスリート本人でも明確には認識できないものかもしれない。
ただ、その選手に注目し、取材してきた者だからこそ「この時、持っている才能が大きく花開いた」と言える試合や場面に遭遇することがある。
東京五輪での活躍が期待されるアスリートたちにとって、そのタイミングは果たしていつだったのか......。筆者が思う「その時」を紹介していく――。
2017年の世界選手権。200m個人メドレー銀メダル獲得に笑顔の大橋悠依 競泳女子個人メドレーの大橋悠依が、「世界と戦える強さ」を手に入れたのは、2017年7月の世界選手権だった――。
大橋が初めて注目を集めたのは、同年4月の日本選手権だった。大会2日目の400m個人メドレーで、それまでの日本記録を一気に3秒24も更新する4分31秒42で優勝したのだ。この記録は前年のリオデジャネイロ五輪なら3位に相当するもので、「タイムが出る予感はありましたが、本当に31秒が出るとは思っていなかったので、うれしさとビックリした気持ちでいっぱいです」と、弾けるような笑顔を見せた。
大橋はもともと背泳ぎが得意だったが、東洋大に入って平井伯昌(のりまさ)競泳日本代表ヘッドコーチの門下生になってからは、ケガや貧血で2年の秋まで低迷が続いた。だが、貧血の治療や苦手にしていた平泳ぎの改善で力を伸ばし、16年日本選手権では400m個人メドレーで3位に入った。五輪の派遣標準記録突破はならなかったが、五輪代表になった2位の清水咲子とは0秒65差と僅差だった。
1 / 6