2020.05.29

競泳のヒロイン大橋悠依が手に入れた強さ。
初の世界で大きく成長した

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Enrico/AFLO SPORT

東京五輪&パラリンピック
注目アスリート「覚醒の時」
第13回 競泳・大橋悠依
世界選手権 200m個人メドレー(2017年)

アスリートの「覚醒の時」――。

 それはアスリート本人でも明確には認識できないものかもしれない。

 ただ、その選手に注目し、取材してきた者だからこそ「この時、持っている才能が大きく花開いた」と言える試合や場面に遭遇することがある。

 東京五輪での活躍が期待されるアスリートたちにとって、そのタイミングは果たしていつだったのか......。筆者が思う「その時」を紹介していく――。

2017年の世界選手権。200m個人メドレー銀メダル獲得に笑顔の大橋悠依 競泳女子個人メドレーの大橋悠依が、「世界と戦える強さ」を手に入れたのは、2017年7月の世界選手権だった――。

 大橋が初めて注目を集めたのは、同年4月の日本選手権だった。大会2日目の400m個人メドレーで、それまでの日本記録を一気に3秒24も更新する4分31秒42で優勝したのだ。この記録は前年のリオデジャネイロ五輪なら3位に相当するもので、「タイムが出る予感はありましたが、本当に31秒が出るとは思っていなかったので、うれしさとビックリした気持ちでいっぱいです」と、弾けるような笑顔を見せた。

 大橋はもともと背泳ぎが得意だったが、東洋大に入って平井伯昌(のりまさ)競泳日本代表ヘッドコーチの門下生になってからは、ケガや貧血で2年の秋まで低迷が続いた。だが、貧血の治療や苦手にしていた平泳ぎの改善で力を伸ばし、16年日本選手権では400m個人メドレーで3位に入った。五輪の派遣標準記録突破はならなかったが、五輪代表になった2位の清水咲子とは0秒65差と僅差だった。