競泳のヒロイン大橋悠依が手に入れた強さ。初の世界で大きく成長した (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Enrico/AFLO SPORT

 舞台は、ハンガリーのブダペスト。最初の種目は競技2日目の200mだった。平井コーチが「メインは400mだけど、最初の種目で気持ちを乗せなければいけないので、200mに合わせた練習もしっかりやってきた」という種目だ。

「予選と準決勝は自分でも、ちょっとびっくりするくらい落ち着いてできました」と話した大橋は、予選で地元ハンガリーのカティンカ・ホッスーと同組になった。「歓声のすごさに驚いた」というが、無理をせずに泳いで2分11秒44で8位通過。「前半はしっかりいけた」という準決勝も、150mを折り返してからは流して2分10秒45で8位、ギリギリでの決勝進出だった。

 だが、大橋は動じていなかった。

「準決勝はベストを出しておきたいと思っていましたが、150mまでのラップを見ても(自分の)状態は悪くないとわかりました。だから順位はあまり気にせず、むしろ決勝は8レーンで最初に入場できてスタートまで時間があるので、周りを気にせず泳げると考えていました」

 一方、平井コーチが考えていたのは「ノーマークだからギリギリで通過できればいい」という作戦だった。そして決勝前には平井コーチから、「メダル(の可能性)もあるぞ」と言われたが、大橋自身は冷静に戦況を分析していた。

「決勝ではベストは出ると思っていましたが、前回銅メダルのシボーン・マリー・オコナー選手(イギリス)の調子があまりよくないことが準決勝でわかりました。だから、8秒後半か9秒前半を出せば3位は獲れると思っていました」

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