池江璃花子が涙の6冠達成。初日のレース後にある「決断」をしていた (2ページ目)

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi

 日本人史上最多6冠をかけて挑むことになった最終日24日の50m自由形決勝。

 個人種目ではこの50m自由形が一番の難関だった。この種目は唯一池江の個人レースのなかで、自分より速いベストタイムを持っている選手がいるレースだった。中国のリュウ・ショウ選手だ。

 池江もレース前は緊張していた。

「50フリーの前は今回のレースの中で一番緊張した。中国の選手の方がベストタイムは速かったけど、絶対負けたくないって気持ちで泳いだし、最後は自分の力を信じて泳いだ」

 結果的に24秒53でリュウ・ショウに0.07秒先着し、大会記録で優勝した。その結果、アジア大会で個人6冠の偉業を達成した。

 本人も「50m自由形の金メダルが一番嬉しい」と語るように、今大会もっとも難しくプレッシャーのかかる状態での金メダル獲得だった。

 アジア大会6日間を戦い終えた池江は「途中は心も折れそうでしたし、体もきつくて、どうなるんだろうって感じだった。この夏は今年しかないので、一生この夏を味わえないって思うと、最後まで力を出しきりたいなって思ったので、結果を出せてよかったです」とレース直後は笑顔で話していた池江だが、表彰式直後に涙を見せる。

「とりあえず泳ぎ終わってホッとしたっていう、緊張がほぐれた感じと、親だったりコーチだったりが見にきてくれて、顔を見て安心したっていうのが一番です」と本人も言うように、母親や4月まで指導を受けた村上二美也コーチ、この夏から指導を受ける三木二郎コーチらが見守るスタンドを見た瞬間に涙が溢れた。張り詰めていた緊張感から解放された瞬間だったのだろう。

 パンパシ水泳が始まった日からこの日で16日目。この夏の池江の長い挑戦は感動の涙で締めくくられた。

 だが、すぐに池江は「まだここで終わったわけではないので、国体も続きますし、日本選手団はこれからも試合は続いて行くので、その応援を今度は私が返して行きたい」と自身の次の大会を早くも見据え、そして、まだ競技の続くアジア大会選手団にエールを送っていた。

 来年は再び世界選手権が行われる。オリンピック前年に世界のライバルが集結する中で、今年以上に進化した「IKEE」を世界のライバルたちの前で見せて欲しい。

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