選手が別人のようになっていく。松田丈志の見た世界ジュニア選手権 (3ページ目)

  • 松田丈志●文・写真  text & photo by Matsuda Takeshi

 一方で男子は厳しい戦いを強いられた。決勝に進む種目はあっても、なかなかメダルが獲れない。最終日の200mバタフライで阪本裕也が獲った銀メダルのみという結果だった。

 このレースはハンガリーのクリストフ・ミラク選手が前半から飛ばし、1分53秒87という今夏の世界選手権で瀬戸大也が銅メダルを獲得したタイムを上回る泳ぎで優勝した。ミラク選手が飛び抜けるなか、阪本は前半から冷静にレースを進め、しっかり最後の50mのラップタイムを上げてきた。男子チーム最後のメダル獲得のチャンスというプレッシャーのかかる状況のなか、自己ベストを更新する1分57秒05 で泳ぎ切った。レベルの高い日本男子の200mバタフライにまたひとり楽しみな選手が現れた。

「世界ジュニア選手権」。その意義とは何なのか?

 2年に1回行なわれる世界ジュニア選手権は今回で6回目だった。そもそもこの大会の意義って何だろうと私はずっと考えていた。なぜなら、この大会は私がジュニア選手だった時にはなかったからだ。

 FINA(国際水泳連盟)の関係者に聞くと、「まだシニアの世界選手権やオリンピックに出場できないジュニア選手たちに国際大会で戦う機会を与えるためだ」と言う。

 私も初めて世界ジュニア選手権を見て、これはいい「予行練習になる」と率直に思った。当然オリンピックや世界選手権とはレベルも違うし、スケール感は小さくなるが、国を代表して大会に出場し、世界の舞台で戦うという意味では同じだ。

 大会運営も世界選手権とそっくりだ。出場した日本のジュニアスイマーたちに話を聞いていくと、さらにその意義が感じられた。

 男子平泳ぎの花車優(はなぐるま ゆう)選手は、国際大会の予選と決勝の間の時間の過ごし方にまだ慣れないと言っていた。日本の国内大会は朝、試合会場に着くと、午後の決勝まで一日中プールにいることがほとんどだが、国際大会では午前中の予選の後、宿舎に戻り、夜の決勝の前に再び会場入りをするパターンが多い。

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