悔しさをバネに世界へ。16歳スイマーがアジアパラで流した涙

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

 アジアの障がい者スポーツの祭典、アジアパラ競技大会が韓国・仁川で開催されている。3日目を終え、日本の競泳陣が活躍し、19、20日の2日間で、金メダル11個を含む計28個を獲得。今大会は、10代の若い女子選手たちが存在感を放っている。なかでも、ひときわ注目を集めているのが、日本選手団最年少の16歳、高校1年生の池愛里(東京成徳大高)だ。初戦の50m自由形(運動機能障害)で金メダル、100mで銀メダルを獲得した。

2年後のリオパラリンピック、6年後の東京パラリンピックでの活躍が期待される池愛里選手2年後のリオパラリンピック、6年後の東京パラリンピックでの活躍が期待される池愛里選手 池の障害は、左足首の機能障害。小学3年生のときに悪性肉腫を摘出する手術を受け、その影響で左足首から先を思うように動かすことができない。しかし、リハビリで始めた水泳を本格的に始めると、もともとの運動神経の良さもあってメキメキと上達した。身長も年々伸び、現在は177センチを超える。その長い手足を生かした、大きなストロークが武器だ。

 19日に優勝した50m自由形のタイムは29秒93。出場した7人の選手のうち、ただひとりだけ30秒を切る圧巻の泳ぎだった。レース後は取材陣に対し、「金メダル、とても嬉しいです」とコメントし、まだ、あどけなさが残るさわやかな笑顔を見せた。だが、すぐに凛としたスイマーの表情に戻り、「自己ベストに届かなかったので、タイムには納得していない」とも話した。

 自己ベストを更新するためには、スタート後の浮き上がりからの泳ぎが課題、と自らを分析する。翌日に行なわれた100m自由形では、その課題をきっちりと修正することに成功。ところが、前半はトップで折り返したものの、終盤に中国の選手に追いつかれて、結果は約1秒差の2着。自身が持つアジア記録も塗り替えられ、池は茫然とした表情で電光掲示板を眺めた。レース後、涙が止まらなかった。

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