【箱根駅伝2026】國學院大・前田康弘監督が固めた総合優勝への決意「覚悟を決めて考えないと、一生、原さんの時代で終わってしまう」 (4ページ目)
【"つなぎ"の区間などはなく、全区間で攻めないと】
前田監督は感心しきりだった。出雲駅伝、全日本大学駅伝で安定して結果を残してきた尾熊迅斗(2年)も、10区で期待に違わぬ走りを見せてくれた。持てる力を振り絞り、最後まであきらめずに前の背中を追い、過去最高の総合2位でフィニッシュ。アンカーを迎え入れる大手町の光景には、指揮官も胸を打たれた。
「『笑顔でゴールしろよ』と言っていたのですが、みんな泣いていて......。すごいチームになったなと。選手たちは、監督である私のはるか上を目指していたと思います。あの瞬間、自分の情けなさを感じました。言っていることと、思っていることが噛み合っていない。総合優勝はイコールで青学大を倒すことなのに、私はどこかで怯みがあったのかもしれません」
大会後、学生時代に師事した駒澤大の大八木弘明総監督から掛けられた激励は、しっかり心に留めている。学生三大駅伝で通算27勝している名将の言葉には熱がこもっていた。
<若い指導者が頑張らないとだめだ。原(晋)を超えない限り、上には行けないぞ。若い奴らがしっかり勝負しないと。一番近くにいるお前がやらなくて、誰がやるんだ。俺が澤木啓祐さん(元順天堂大監督)を超えたのと一緒だ>
47歳の愛弟子は恩師の思いを口に出しながら、自らに言い聞かせていた。
「覚悟を決めて考えないと、一生、原さんの時代で終わってしまう。原さんはすばらしい指導者ですし、リスペクトもしているのですが、そこに勝たないと、新しい時代は来ない。昔、大八木さんも、澤木さんを超えるために(学生だった)僕らが見えないところで、きっといろいろ考えていたんだと思います」
102回大会を通して、勝ち筋は見えつつある。ここからひと回りも、ふた回りも大きく成長し、強気で勝負を挑んでいくつもりだ。
「山も平地も"つなぎ"の区間などはなく、全区間で攻めないと。将棋に例えるならば、すべて飛車、角を並べるつもりでいきます。金、銀、桂馬などでかわそうとしてもダメ。何本柱と言っている時点で、青学大には勝てないと思います。今回は青学大が崩れるのを待っているところもあったのですが、次は攻めて、攻めて、総合優勝を取りにきます」
気持ちの入った言葉の行間には強い意志がにじむ。充実してきたスカウトの成果もあり、春には即戦力候補の新入生たちが入ってくるという。4年生たちが退寮すれば、また新たなサイクルが始まる。指揮官の箱根駅伝に終わりはない。
著者プロフィール
杉園昌之 (すぎぞの・まさゆき)
1977年生まれ。スポーツ総合出版社の編集兼記者、通信社の記者として働いた後、フリーランスのスポーツライター兼編集者へ。現在はサッカー、ボクシング、陸上競技、野球、五輪競技全般とジャンルを問わずに取材している。
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