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【箱根駅伝2026】國學院大・前田康弘監督が固めた総合優勝への決意「覚悟を決めて考えないと、一生、原さんの時代で終わってしまう」 (2ページ目)

  • 杉園昌之●取材・文 text by Masayuki Sugizono

【「出会い」につながる「ダイヤの原石」の発掘過程】

 前田監督の持論は山上りのスペシャリストはつくるのではなく、「出会い」。適性を見抜いたうえで、いかに適切な訓練を積ませるかどうか。では、いつ、どこでダイヤの原石を探し当てたのか――。

 いまから2年半前の春である。全国に張り巡らせたネットワークから興味深い情報を仕入れ、高知県高校総体に出向いたときのことだ。高知工業のユニホームを着る2年生の走りにすぐに目を奪われた。それが髙石樹だった。

「この選手はすごい、絶対いける、と確信に近いものを感じたんです。レース運びを見ると、独走していたのですが、一人速いペースでギリギリまで追い込み、そこから落ちなくて。粘りきったんですよ。ガッツがあふれる表情も良かった」

 山上りの適性は、そのラストの粘りにある。

「山は誰でもきついんです。(しんどさの)沸点に達したときに粘れるかどうかなので」

 伸びしろも十分あった。異色の経歴を持ち、中学校時代は運動部にも所属しないゲーマーの帰宅部。陸上競技を始めたのは高校生からである。才能が本格的に開花する前から目をつけ、勧誘に成功した。運命の出会いから2年後には國學院大へ入学。そして、すぐに山の準備を始めさせた。前田監督の目に狂いはなかったようだ。長い上り坂の練習では、クライマー然とした走りを見せた。

「これまで見たことのないくらいすばらしい走りを見せてくれたんです。体の軽さ、腰の位置、脚の回転、そのすべてが山を上っているように見えませんでした。上りを怖がっていないメンタル面もよかったですね」

 春、夏と鍛錬を積み、順調に成長していった。秋を迎えれば、本格的な準備が始まる。10月の出雲駅伝は回避し、向き合い続けたのは厳しい山道。髙石の名前がなかったのも、そのためである。ただ、メンバー入りしていた全日本大学駅伝は出走の予定があったという。

「別に隠していたわけではなく、実は大会前にインフルエンザにかかり、走れなかっただけなんです」

 結果的に"秘密兵器"となり、周囲を驚かせることになる。黒田が1時間07分16秒という異次元の新記録を樹立し、すべての話題をさらってしまったが、髙石は次代の『山の神』候補と言ってもいいインパクトを与えた。1時間09分台は目の前に迫り、2年目には"神の領域"である1時間08分台も視野に入れる。歴代2位の記録は、若林が持つ1時間09分11秒。

「(08分台に)チャレンジする権利はあると思います。ここから育てていきたいですね。まだコース取りなども甘かったので、タイムはもっと伸びると思います。とはいえ、次代の山候補も新たにピックアップしているので、将来的には競い合いができればなと。髙石本人の意向も尊重したいですし、5区で完全に固めるつもりはありません。総合優勝するためのオーダーを組みたいと思っています」

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