【箱根駅伝2026】渡辺康幸が分析する覇権争いの行方 中央大は山区間の課題をクリアして頂へ 早稲田大は2区・5区の強み生かして往路に賭ける (2ページ目)
【早大は是が非でも往路優勝を目指したい】
――渡辺さんの母校であり、指導者として3冠を達成した早稲田大についてはいかがでしょうか?
渡辺 イチOBの立場で言わせてもらえば、総合優勝を目指すなら、往路優勝を獲ることに重きを置いて積極的に攻めて欲しいと思います。こういうチャンスは、滅多にないからです。エースの山口智規選手(4年)がいますし、「山の名探偵」工藤慎作選手(3年)もさらに力をつけています。1年生には鈴木琉胤選手、佐々木哲選手もいて、出遅れていた山口竣平選手(2年)も戻ってきました。往路優勝を狙えるだけの戦力はそろっています。
――出雲(2位)、全日本(5位)の走りから何か感じた部分はありますか?
渡辺 全日本は山口竣平選手を起用できなかったり、層の薄い部分が出た結果だったと思います。そうは言っても、きちんと選手が戻ってくれば、流れるオーダーは組めると思います。
――今年の全日本で渡辺さんが保持していた8区日本人最高記録を30年ぶりに更新した(56分54秒)工藤選手は、箱根5区でカギを握ります。過去2回は区間6、2位ですが、期待は?
渡辺 たすきをもらう位置によると思いますが、1時間8分台はまず間違いなく出ると思うので、あとは8分台前半なのか、後半になるのか(※区間記録は前回の青学大・若林宏樹の1時間09分11秒)。7分台までいく可能性もあると思っています。平地の走力はかなりついてきているので、適性も含めて十分に1時間8分30秒ぐらいはいけると見ています。できれば1分ぐらい更新してほしいなというのがあります。
――工藤選手にとって、好走する展開は?
渡辺 先頭に1分差の3番、4番ぐらいでたすきを受けるのが一番盛り上がるのではないでしょうか(笑)。そうすると宮ノ下ぐらい(9km付近)で15〜20秒差ぐらいまでいって、その先、小涌園(12km付近)でもう捕まえると思うので。
――2区は山口智規選手で決まりですか?
渡辺 そうでしょうね。山口竣平選手が3区に入って、鈴木選手を4区に置くのが王道ではないでしょうか。間瀬田純平選手(4年)の力を生かすなら、前回区間4位の1区、ハイペースを予想するなら鈴木選手を1区に持ってくる選択肢もあると思います。早稲田は復路までエース級を残すことは選手層の面からもなかなか難しいので、往路から攻めの走りを見せていい流れを作りたいところです。
後編を読む>>>渡辺康幸が分析する「5強」崩しとシード権争い 強さを備えた帝京大に注目 創価大、城西大、東洋大は?
⚫︎プロフィール
渡辺康幸(わたなべ・やすゆき)/1973年6月8日生まれ、千葉県出身。市立船橋高-早稲田大-エスビー食品。大学時代は箱根駅伝をはじめ学生三大駅伝、トラックのトップレベルのランナーとして活躍。大学4年時の1995年イェーテボリ世界選手権1万m出場、福岡ユニバーシアードでは10000mで優勝を果たし、実業団1年目の96年にはアトランタ五輪10000m代表に選ばれた。現役引退後、2004年に早大駅伝監督に就任すると、大迫傑が入学した10年度には史上3校目となる大学駅伝三冠を達成。15年4月からは住友電工陸上競技部監督を務める。学生駅伝のテレビ解説、箱根駅伝の中継車解説でもおなじみで、幅広い人脈を生かした情報力、わかりやすく的確な表現力に定評がある。
著者プロフィール
牧野 豊 (まきの・ゆたか)
1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「Jr.バスケットボール・マガジン」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。22年9月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。
2 / 2

