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【箱根駅伝2026】「5強」に挑む帝京大は、中野孝行監督の声掛けで選手たちの意識に変化「タイムよりも勝つことを意識しよう」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

――順番、順位を狙う意識が各選手についてきた手応えは?

中野 オーストラリアで彼らが結果を残してきたから「できるんだ」と思ったくらいです(笑)。

 ただ、「記録を出しても負けたら何の意味もないよね。タイムは破られるけど、勝ったら記録として残る。選手権や選考会もそうだけど、勝つことが一番重要。タイムが出ても10番目だったら何の意味もないから、勝つことを意識しよう」というのは練習のなかでもかなり言っています。実際には記録を出さないと自信にもならないし、上のステージにも上がれないので、ある程度記録が出てきたら「ちょっと勝つことも意識していこうか」というような感じです。

――全日本のあとに、「レース前に内心では3位を狙えるのではないかと思っていた」と話していましたが、チームとしてはどういう状態で臨んだのでしょうか?

中野 全日本1週間前の 8000mのタイムトライアルでは11人が集団で走り、今までの帝京最高記録を10秒以上も上回っていました。柴戸と島田は集団から2秒くらい前に出ていて、楠岡は15秒遅れでスタートしても、その集団に追いついているのを見て、「これはいい、もしかしたら全日本では面白いレースができるかも」と思いました。学生たちは「5強崩し」と言っていましたが、私は過剰なストレスやプレッシャーをかけたくなかったので、そんな期待は誰にも言わず、黙ってレース当日を楽しんでいた感じです。

――そんな仕上がりを見せている新チームですが、前回からは絶対的なエースだった山中選手や、小林選手など4年生4名が抜けたなかで、どういう取り組みを行なったのですか?

中野 4年生が抜ける時に周りからよく言われたのは、「山中の代わりはなかなか出ないよね」ということでした。それは確かにそうなんです。山中はやっぱり特殊だし、すばらしいランナーだと評価している早稲田の山口(智)君に出雲、全日本、箱根と偶然にも同じ区間ですべて勝ちました。

「そんな選手の代わりは当然いないし、個人でカバーすることはできない。でもチームとしてはやれるよね」ということで、みんなが必死になってパフォーマンスを上げてくれたんだと思います。山中に頼っていた自覚はあったから、「真剣にならなくては」と覚悟してくれたのかなと思います。私はそれぞれが「自分はエースだ」と思ってもらいたいと考えています。今の帝京大は去年より間違いなく力が上がっているけど、それは上位選手も上がったけど、下も上がってきて、全体的にギュッと凝縮されてきたからかなと思います。

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Profile
中野孝行/なかの・たかゆき
1963年8月28日生まれ。北海道出身。
国士舘大学在学時、箱根駅伝に4年連続で出場した。大学卒業後は実業団で走り、引退後は指導者の道へ。2005年に帝京大駅伝競走部の監督に就任。2007年から19年連続で箱根駅伝出場を果たしている。最高順位は2000年と2020年の4位。今シーズンは、出雲駅伝8位、全日本大学駅伝6位の成績を残している。

著者プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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