日本記録を19年保持した野口みずきから現役選手へのエール「命を燃やしてマラソンに打ち込んでほしい」 (4ページ目)
【前田選手が日本記録を更新して、いい流れになるかな】
現在は、岩谷産業陸上競技部のアドバイザーを務めながら、市民マラソンのゲストランナーやテレビ中継の解説などで活躍している。現役時代とは異なり、今は景色を味わい、市民ランナーの背中を押しながら、走ることを楽しんでいる。解説は国内の重要なレースを担当することが多いが、世界のトップで戦ってきただけに、日本選手の現状には少し物足りなさを感じている。
「前田さんが日本記録を更新して、いい流れになるかなと思っていますが、現実は世界とは大きな差があって、そこを完璧に埋めるのは難しいですね。でも、近づくことはできると思うので、日本の選手に頑張ってほしいです。ただ、今の選手の皆がそうだと言うつもりはないですが、チームや個人の練習などいろんな情報を得て、(他の選手の環境を)うらやましいとか、望むばかりになっているのかなと思う部分もあります。
3年前に、書籍(『野口みずきの練習日誌:金メダリストのマラソントレーニング』)を出した際、多くの指導者の方に購入していただいたのですが、これをやるのは難しい、故障してしまうという声を聞きました。でも、私はできないことはないと思うんです。選手には、命を燃やしてマラソンに打ち込んでほしいなと思います」
現役選手への檄は、そうして世界と戦ってきた金メダリストからの福音である。
(終わり。文中敬称略)
野口みずき(のぐち・みずき)/1978年生まれ、三重県出身。宇治山田商業高校から1997年にワコールに入社。その後はグローバリー、シスメックスに所属。2002年に初マラソンとなる名古屋国際女子マラソンで優勝、翌年の大阪国際女子マラソンも制し、2003年世界陸上パリ大会で銀メダルを獲得。そして2004年アテネ五輪では、前大会の高橋尚子さんに続く日本人女子2大会連続の金メダルに輝く。2005年ベルリンマラソンでは2時間19分12秒の日本新記録で優勝。2008年北京五輪もマラソン代表に選出されるが、大会直前のケガで出場を辞退。その後は故障との戦いに苦しむも、2013年世界陸上モスクワ大会では代表の座に返り咲いた。2016年に現役を引退し、現在はメディアやイベントへの出演ほか、岩谷産業陸上競技部のアドバイザーなどを務める。
著者プロフィール
佐藤 俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。近著に「箱根5区」(徳間書店)。
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