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青山学院大、國学院大...増える箱根駅伝ランナーのマラソン挑戦、好タイム連発も早期挑戦にはリスクも (3ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

【「学生にマラソンをやらせてはダメだ」という声も】

 今年度の平林に関して言うと、出雲駅伝、全日本大学駅伝は問題なく走れていたが、ハーフ以上の距離を走る箱根の2区では昨年よりタイムも区間順位も落とし、また、別大では32km過ぎに前に出るも、35.5km過ぎに若林らのいる先頭集団から遅れはじめた。

「(昨年の)マラソンの目に見えない疲労が残っていたのではないかと思います。まだ身体が細いですし、今後の成長は大いに期待できますが、2、3年時の爆発力のある状態に戻るには、もう少し整える時間が必要なのかなという印象です。

 昨年12月の福岡国際マラソンで2時間05 16 秒の好タイムで優勝した吉田祐也君(GMOアスリーツ)も、青山学院大4年時(2020年)に別府大分毎日マラソンで2時間0830秒の記録を出し、勢いに乗って同年末の福岡国際マラソンで優勝しましたが(2時間7分5秒)、その後は長く苦しみました。疲労からの回復に時間を要したのではないかと思います。マラソンにはそういうリスクもある。今でも高校の先生方からは『学生にマラソンをやらせてはダメだ』という声も聞かれます」

 青山学院大をはじめ、多くの大学からマラソンに挑戦する学生が出てくるようになった一方で、近年の駒澤大にはほぼいない。それは大八木弘明総監督の「まずは世界に通用するスピードを磨いてから」という信念が大きいのだろう。走りのベースとなるスピードを限界まで鍛え、その後にスタミナをつけていくことで、マラソンにもスムーズに移行できるというわけだ。

 そうした強化の多様性を認めたうえで、現場の指導者と選手とのコミュニケーションが重要になる。

「普段の練習を高い達成率で消化し、身体が整い、結果も出てくると、学生のうちにマラソンを経験しておきたいという話になると思います。その時、マラソンは実業団に行ってからでいいと説得して納得するのか、そうじゃないのか、十分な話し合いは必要であると思います」

 早期のマラソン挑戦にはリスクがともなうことを忘れてはならない。それを踏まえ、指導者は学生の力量、適性を見極め、その気持ちにどう応えていくのか。

 3月2日の東京マラソンには、今年の箱根4区で区間賞を獲得した青山学院大の太田蒼生が出場予定だ。記録の出やすいコースとして知られる同大会だが、日本学生陸上競技連合はこれまでもエリート枠、準エリート枠での学生の出場を後押ししてきた。学生がマラソンに挑戦していく流れは今後も続くだろう。

著者プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。近著に「箱根5区」(徳間書店)。

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