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箱根駅伝 青学大の圧倒的強さを支えた6人の4年生出走者が卒業 来シーズンはふたつの山区間含め原晋監督にとって挑戦の1年に (2ページ目)

  • 生島 淳●取材・文 text by Ikushima Jun

【軸となる箱根経験者と待たれる2年生世代の台頭】

 今回の優勝チームでは、1区・宇田川瞬矢(3年)、2区・黒田朝日(3年)、8区・塩出翔太(3年)、10区小河原陽琉(1年)が残る。頼もしいのは、来年も黒田が残ることだ。黒田が順調であれば、2区で間違いなくトップ、あるいは首位が見える位置でたすきを渡せるだろう。それほど、黒田はレースで外さない。黒田がいることによって、青学大は間違いなく往路で流れに乗れる。

 課題となるのは、3区・鶴川、4区・太田の穴になるが、1年生に期待がかかる。

 高校時代、世代ナンバーワンの実力を誇った折田壮太、昨年11月の世田谷246ハーフで優勝し、箱根駅伝でも10区の最終候補者に残っていた安島莉玖、そして高校3年時に5000mで13分34秒20のタイムをマークしている飯田翔大といった面々の成長がポイントとなる。

 つまり、10人のメンバーはそろうが、彼らが大駒としての働きができるかどうかが重要となる。昨年、鶴川は春のトラックシーズンから絶好調で、駅伝の季節に入ってからも好調を維持した。また、太田は箱根にピタリと照準を合わせられる独特の感性がある。このふたりのような特性を持ったランナーが登場するかどうか。ポテンシャル的には、能力値の高い折田、ハーフマラソンの適性を示している安島の台頭を期待したい。

 来年度に向けて大きかったのは、今回の箱根駅伝で、1年生の小河原が10区で区間賞を取ったことだ。これが同級生たちへの大きな刺激になっているのは間違いない。そしてまた、この2年間でまだ箱根駅伝の出場者がいない2年生にとっては、来年度が背水の陣といってもいい状況となる。来年の青学大は学年間の競争意識が激しくなる。これは、青学大が強くなるための条件のひとつだ。

 ただし、もうひとつ大きな課題がある。

 これまで優勝したチームのなかで、5区、6区の選手がそろって卒業したことはなかった。

 今大会が終わったあと、瀬古利彦氏と話す機会があったが、「結局、箱根駅伝は"山"なんですよ。早稲田が優勝した時を振り返っても金さん(哲彦・現解説者)が5区を走った時でしたから」と話していた。

 その意味で、4年間で3度、5区を担当した若林が卒業する穴は大きい。よくよく考えてみると、優勝できなかったのは若林が2年生の時に体調不良で走れなかった時だけなのだ。

 加えて、野村の「56分台」の穴も大きい。普通に考えれば、ここで2分のマイナスとなる。もちろん、今年も野村のほかに山下り候補は育成しており、58分台で走れるポテンシャルの選手はいる。しかし、総合優勝を決めるほどのインパクトを与えられる選手がいるかどうかというと、それはまた別の話になる。

 こうして来年度を概観していくと、6人の卒業生の穴を埋めたうえで、特殊区間要員を養成する必要があるということだ。

 ふつう、これだけの課題を解決するのは難事で、「ミッション・インポッシブル」に思える。しかし、青学大の部内競争力はこのミッションを可能にするかもしれない。

 新入生も含め、今年も春から青山学院から目が離せない。

著者プロフィール

  • 生島 淳

    生島 淳 (いくしま・じゅん)

    スポーツジャーナリスト。1967年宮城県気仙沼市生まれ。早稲田大学卒業後、博報堂に入社。勤務しながら執筆を始め、1999年に独立。ラグビーW杯、五輪ともに7度の取材経験を誇る一方、歌舞伎、講談では神田伯山など、伝統芸能の原稿も手掛ける。最新刊に「箱根駅伝に魅せられて」(角川新書)。その他に「箱根駅伝ナイン・ストーリーズ」(文春文庫)、「エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは信じること」(文藝春秋)など。Xアカウント @meganedo

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