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箱根駅伝2025 「三冠」達成時の主将・山野力が見る今季の駒澤大 「今、篠原(倖太朗)は苦しいかもしれないけど...」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

【走れない選手のモチベーションをどう維持するか】

 山野がキャプテンの時は、同級生の田澤廉(現・トヨタ自動車)をはじめ、3年生の鈴木芽吹(現・トヨタ自動車)、花尾恭輔(現・トヨタ自動車九州)、安原太陽(現・花王)、2年生の篠原倖太朗(現・4年)ら個性が強い選手が多かった。個性が強いゆえに衝突したり、自分の道を進もうとする選手も出てくるが、声を荒げることはなかったのだろうか。

 「チームのミーティングとかで、キャプテンとして言わないといけないことがある時は、ちょっときつい言い方になることもありましたけど、個人に対しては声を荒げることはほとんどなかったです。怒鳴っても何も変わらない。それよりもどう相手に理解してもらうかっていうことの方が大事なので、お互いに納得できるように話をしていました」

 チームでは夏が終わると序列が明確になっていく。駅伝に関わっていく選手、そこに到達できるかどうかギリギリの選手、そこに及ばない選手たちだ。特に大変なのが駅伝メンバーに関われない3、4年生だ。駅伝を走れない彼らのモチベーションを維持するのは、なかなか難しい。

 「一度落ちたモチベーションを上げるのは簡単じゃないです。でも、やる気を失ったままでいるのは、個人にとってもチームにも良くないので、ミーティングで、『みんな、自分の実力が足りなかったり、ケガで走れず、モチベーションが下がっていくことがあると思う。でも、入学した時を思い出してほしい。みんな、箱根駅伝を走りたいと思って大学に来たはず。自分が一度やると決めたことは最後までしっかりやり通してほしい』という話をしました」

 山野の言葉が響いたのだろう。チームは一枚岩になり、結果を出した。三冠を達成し、翌年は2年連続の三冠に挑むことになった。そのチームのキャプテンとなる鈴木芽吹に山野は、メッセージを残した。

 「自分たちがやってきたことが三冠という結果につながったけど、それをそのまま来年も通してやるのではなく、芽吹たちがやりたいようにイチからチームを作った方がいい」

 鈴木はうなずきつつ、静かに聞いていたという。

 「芽吹は真面目だし、選手としての能力が高く、キャプテンとしての資質もあったので、心配はしていなかったです。最終的には箱根で勝てなかったですけど、終わった後に会ったらやりきった感があったので、結果はどうあれ、いいチームを作れたんじゃないかなと思います」

 鈴木がキャプテンとしてチームを引っ張ったシーズン、駒澤大は出雲と全日本を制し、2年連続での三冠に王手を掛けた。だが、箱根駅伝で青山学院大に力負けしてしまった。

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