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田中佑美が宝塚音楽学校への受験を断念した理由 両親から言われた「その程度の覚悟ならば、辞めたほうがいい」 (3ページ目)

  • 石塚 隆●取材・文 text by Ishizuka Takashi

【陸上競技を選んでよかった】

── 差し支えなければ、受験を断念した経緯を教えてくれますか。

「受験届は手に入れたのですが、手続きをすることに躊躇してしまって......。今でこそ『宝塚が好きです』と正直に言えるようになりましたが、当時は学校の友人にも言えず、極私的なものだったんです。

 ですから、受験のために必要な健康診断書を取る際、かかりつけ医にお願いする時にすら言えずに戸惑ってしまったんです。それを見ていた両親から『その程度の覚悟ならば、辞めたほうがいい。そんな簡単な世界じゃない』と言われ、結局、受験をあきらめたんです」

photo by Kojima Yoheiphoto by Kojima Yoheiこの記事に関連する写真を見る── 覚悟を決めることができなかった。

「今思えば、高校生で人生の重要な選択を迫られて、そこまでの覚悟はなかったんだなって思っています。来世ではきっと......と思ったりもするんですが、今はこの人生というか、陸上競技を選んでよかったと思っています」

── 今や日本を代表するハードル選手。自分の選択は間違ってなかったなと、あらためて感じていますか。

「そうですね......。今、私は社会人4年目なんですけど、1年目は結果が出ず、陸上を選んだことを後悔というか、反省していたんです。正直に言えば、大学4年生の時にコロナの真っただ中で就職に困っていたのもあって、当時は『絶対に陸上を続けたい』という熱量があったわけでもなかったんです。ただ、何となくやめる決断ができずに続けてしまったという感じでした」

── それで1年目は後悔をしてしまった。

「今は結果がある程度出ているので、続けてよかったと思っています。ただ、世の中ってわりと結果を出している人が正解というか、たとえば陸上だったら足の速い人の練習方法や考え方が正しいと見られがちです。でも、それはきっと結果というエフェクトがかかっているだけで、それが本当ではないんだよっていうのが自分のなかでは大きくあるんです」

── 結果はあくまでも表向きのことであって、競技者としてそれがすべてではない。

「自分はたまたまというか、たくさんの人の手を借りて、後悔しないレベルまで競技力が上がって、今このようにお話させていただく機会をいただいています。ですが、自分のすべてが正しいと思っているわけではないし、反省すべき点も多いので、これをよりよくしていきたいと今は思っています」

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