【全日本大学駅伝】駒澤大が「意地の2位」で証明した底力 山川の爆走に篠原の気迫は箱根駅伝への自信に (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【篠原の意地と序盤の出遅れをカバーした総合力】

 全日本では5連覇を狙った駒大だが、今回は序盤で大きく崩れた。

 1区は後半まで超スローペースの展開。そのなかで出雲5区区間2位だった島子公佑(2年)はトップに7秒差、14位での中継。続く2区は当日変更で出走となった、出雲1区区間6位の期待のルーキー、桑田駿介(1年)。だが、桑田が序盤から精彩のない走りになってしまった。

 桑田の2区起用について藤田監督はこう話す。

「やっぱり8人を揃えられなかった部分はあるし、1年生にあの区間をまかせたというのは選手層の薄さから来るもの。もともと桑田は高校駅伝でも4区を走っていたように単独走が得意だけど、今年は力をつけているので2区でもやれるのではという考えもあって据えたが、プレッシャーなどいろんな重荷もあったのかなと思います」

 桑田は、創価大の吉田響(4年)が先頭でガンガン引っ張る展開となるなか、区間賞でトップ中継を果たした青学大の鶴川正也(4年)から2分19秒遅れの区間17位に終わった。

 藤田監督は「うちのチームは総監督の大八木の時からそうだけど、将来エースになり得る人間は1年生でもエース区間に入れていましたから。2022年世界陸上のマラソンに出場した西山雄介(トヨタ自動車)も、1年で2区を走って抜かれていますが、その後は成長した。それが一番大事なことだと思うので、この悔しさを持って桑田がどう成長していくかが非常に楽しみです」と言う。

 もっとも、3区からの立て直しには力強さがあった。

「ズルズルいかないで追撃態勢を整えられたのが大きい。それができた走りには非常に成長した部分を感じた」と藤田監督が評価した伊藤蒼唯(3年)が区間2位の走りで8位に上げると、大学駅伝初出場組の4区・谷中晴(1年)と5区の村上響(2年)、6区の安原海晴(2年)がそれぞれ区間3位、5位、3位でつなぎ、チーム順位を5位に押し上げる。

 そして17.6kmのエース区間7区では、主将の篠原倖太朗(4年)が前で競り合う青学大・太田蒼生(4年)と國學院大・平林清澄(4年)を追いかけ、そのふたりを10秒上回っての区間賞獲得で3位まで押し上げた。

「出雲で國學院の平林に負けたからといって、別に自信を失うことはなかったが、応援してくれた人たちが悲しんでいたので本当に申し訳なかった。だから今回はやり返すしかないと思っていた」という篠原。藤田監督は当初、篠原と桑田の配置を2区と7区でどうするか迷っていたが、「うちはこれまで田澤廉や鈴木芽吹(ともに現・トヨタ自動車)を7区に入れてきたように、大八木総監督も駒澤のエースだったら7区じゃないかと言い、私もそのとおりだと思った。本人も7区をやりたいとずっと言っていたし、1回負けた平林には2度は負けたくないという強い気持ちもあったので、その覚悟があったら大丈夫だなと思った」と篠原の7区起用を決断したという。それが8区の山川とともに駒大のストロングポイントとなって機能した。

「篠原は今まで、ほかの選手と一緒に走るレースを得意としていて、単独走があんまり得意ではないと言われていたが、今回は単独走で、しかも前で競り合っていたふたりに勝つだけではなく、田澤の区間記録に19秒差まで迫る記録を出して区間賞を獲ったことは非常に強かった。駒澤は本当に転んでもただで起きないというところを見せられたので、負けはしたけど、選手は頑張ったなと思います」

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