「箱根駅伝で優勝を争えるチームに」3年連続出場を狙う立教大学の現在地とは (3ページ目)
「駒澤大では、ポイント練習は最後までやり切ることを前提に行なっているため、選手が遅れていくことはあまりありません。遅れてしまうと、練習の目的が達成できず、効果が薄れてしまいます。そのため、夏合宿からグループをこれまで以上に細分化し、『1回きりではなく、継続して練習をやり切れるグループを選択しなさい』と伝えました。結果として、バラバラになったのは1、2回程度で、基本的にはまとまって練習を行なうことができました。選手たちは、『今までの合宿では考えられない』と驚いていましたが、練習の消化率は約90%に達し、しっかりとやり遂げたので非常によかったと思います。」
同じ合宿地で練習をしていた他校からも「立教大はいい練習をしていた」と、評価が高かった。現在は駅伝に絡むトップチームに20名ほどおり、彼らが箱根駅伝予選会と全日本大学駅伝に臨むことになる。
「予選会に向けて昨年の状況を選手に確認したところ、『昨年は選考というより、今走れている選手が走るという消去法的な感じでした』という答えが返ってきて、正直驚きました。今年は約20名がしっかりとまとまって練習を消化できていて、選手たちは予選を通過できるだけの力を十分に備えていると思います。欲を言えば、大エースとなるような飛び抜けた選手が出てきてくれるとさらに心強かったのですが、それでも上位層の選手たちには他校のエースと堂々と勝負してほしいですし、中間層の選手たちには、自分の力をしっかり発揮してもらいたいと思っています。目標は3位以内ですが、力を出し切れば十分に狙えると思います」
昨年の予選会は6位で突破した。今年は、中央大を始め駅伝強豪校が予選会出場になり、激戦が予想される。だが、この予選会を乗り越えていかないと箱根のシード権獲得という目標に届かない。髙林が考える「これから先」も見えてこない。
「これまでは箱根に出場することが目標でしたが、今後はシード権を獲得し、将来的には優勝を争えるチームにしていきたいと考えています。そのために、私はこの場に呼ばれたのだと、自分の役割を強く認識しています。いつか、大八木さん、藤田さんの駒澤大学や、大学の先輩である前田(康弘)さんが率いる國學院大学など、強豪校と肩を並べられるようなチームに育てていきたいと思っています」
予選会突破は、そのための第一歩になる。
■Profile
髙林祐介/たかばやしゆうすけ
1987年7月19日生まれ。三重県立上野工業(現伊賀白鳳)高等学校では3年連続インターハイで入賞し、2006年には駒澤大学文学部入部。学生三大駅伝では7度の区間賞を獲得した。卒業後はトヨタ自動車に入社。2011年全日本実業団対抗駅伝にて3区区間新記録を樹立。2016年に現役を退き、2022年駒澤大学陸上競技部コーチに就任。2024年4月立教大学体育会陸上競技部の男子駅伝監督に就任した。
著者プロフィール
佐藤 俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。
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