「目立った存在ではなかった僕みたいな選手でも夢が広がっている」カンザス大・樋口諒が示す陸上留学の選択肢 (3ページ目)

  • 門脇 正法●取材・文 text by Kadowaki Masanori

【今があるのは文武両道のおかげ】

ーー陸上でアメリカへ留学するという選択肢を樋口さんが示している気がします。

 陸上をするためにアメリカの大学に行くというのが、なかなかメジャーなものではないと思うので、僕がもっと頑張っていくことで、たくさんの人たちに「こういう選択肢があるんだよ」と知ってもらえたら、ありがたいですね。

 特に、中距離を得意としている選手たち、大学で箱根駅伝はちょっと長すぎるかなと思っている選手たちは、アメリカの大学で中距離をするというのはありかなと。

 もちろん、日本の大学で陸上をしていたら、言葉の壁もなくてストレスもないので、もしかしたらもっと記録が伸びていた可能性もあるかもしれませんし、日本の大学も楽しそうだなと思う時もあります(笑)。

 でも、陸上の強豪校じゃなくて、特別目立った存在ではなかった僕みたいな選手でもまだまだ先があって、夢や世界が広がっていることを見てもらえたら、みんなに勇気を与えられるんじゃないかなと思います。

今年のU20日本選手権・男子1500mを制した樋口 撮影/和田悟志今年のU20日本選手権・男子1500mを制した樋口 撮影/和田悟志

ーー最後に、樋口さんだからこその文武両道について教えてもらえたらと。

 アメリカのほうが文武両道というのが、日本よりも当たり前に浸透しているのかなと思っています。別に美徳とかカッコいいとかじゃなくて、アスリートをやっていても、学校の成績はちゃんととらないといけない風潮があるような気がしています。

 実際、大学には「GPA」という成績評価値があって4が最高なんですが、それが最低でも2.3点を維持しないと、試合や練習に参加できなくなってしまうというルールがあるんです。(樋口さんの1年目のGPAは3.9)

 僕としては、これまで勉強とスポーツをしっかり頑張ってきたからこそ、今、こうしてアメリカに留学して、両方を楽しめているのかなと感じます。スポーツにはケガのリスクもあるので、勉強が保証じゃないですけど、もうひとつ何かがあるということが、スポーツも思いきり楽しめることにつながっているんじゃないかと。

 今があるのは文武両道のおかげだと思います。

終わり

前編<名門カンザス大に進学し急成長!ノーマークからU20日本選手権優勝の樋口諒が明かす現地の「恵まれた環境」>を読む

【プロフィール】
樋口 諒 ひぐち・りょう 
2005年、愛知県生まれ。中学時代から陸上大会に出始め、一宮高校3年の時にはインターハイ男子800mに出場。卒業後はアメリカのカンザス大学に進学。2024年のU20日本選手権・男子1500mで優勝。趣味は書道と映画鑑賞。

プロフィール

  • 門脇正法

    門脇正法 (かどわき・まさのり)

    マンガ原作者、スポーツライター。1967年、埼玉県生まれ。日本女子体育大学大学院スポーツ科学研究科修士課程修了。アニメ『ドラゴンボールZ』の脚本家である小山高生氏からシナリオを学び、マンガ原作者デビュー。特にスポーツアスリートの実録マンガを得意としており、『世界再戦ー松坂大輔物語ー』(集英社/少年ジャンプ)、『好敵手ー室伏広治物語ー』(同)、『闘球「元」日本代表ー福岡堅樹物語ー』(集英社/ヤングジャンプ)の原作を担当。現在はマンガの原作だけでなく、「少年ジャンプ」のスポーツ記事特集『ジャンスタ』を中心に、『webスポルティーバ』の「文武両道の裏側」など、スポーツライターとしても活躍中。著書に『バクマン。勝利学』『少年ジャンプ勝利学』(ともに集英社インターナショナル)などがある。

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