「目立った存在ではなかった僕みたいな選手でも夢が広がっている」カンザス大・樋口諒が示す陸上留学の選択肢 (2ページ目)

  • 門脇 正法●取材・文 text by Kadowaki Masanori

【伸びしろしかないと信じて進んだ道】

ーー現在の円安傾向。海外留学は金銭面で大変な部分もあると思いますが、奨学金があるのでしょうか?

 僕の場合には、借金型ではなくて給付型の留学生向け奨学金のほか、アスリートがもらえる奨学金があって、そうしたものを使いながらやっている感じになります。それでも円安は大変ですね......。

オンラインでインタビューに応じてくれたオンラインでインタビューに応じてくれた

ーー最初にカンザスの地に立って、一番大変だったことは?

 やっぱり最初は英語が大変でしたね。初めての大学生活がアメリカの大学っていうのでダブルで大変でした。たとえば、学校のオリエンテーションとか陸上の練習やチームミーティングでも、言葉を理解していないと次に何が起こるかわからない。そんな不安のなかで過ごすのは、ちょっとストレスでした。

ーーそのストレスはどれくらいで解消できましたか?

 1カ月くらいですかね。もちろん、大変なことはあるんですが、"アメリカ補正"というか、アメリカの大学に自分がいるという興奮も同時にありました。今では、チームミーティングや授業、また日常会話もほとんど理解できるようになりました。

ーー陸上に関しては、カンザス大に入って実際にここまで伸びると思っていましたか?

 僕としては、それこそもう伸びしろしかないから、アメリカへ行こうと思っていたんです(笑)。1年目に800mで1分50秒を切って、1500mで3分46秒台を出したいと思って頑張ってきました。まだ800mは1分50秒09ですが、1500mはU20日本選手権で3分46秒31を出せたので、合格点かなと思っています。

ーーアメリカでの2年目を迎えますが、記録はどこまで伸びていきそうですか?

 800mも1500mも、どっちもまだまだ伸びしろはたくさんあると思いますし、800mの1分49秒台はすぐに出ると思うので、その先の48秒台、47秒台を目指してやっていこうと思います。

 今まで800mを中心やってきたんですけど、1500mがけっこう向いているんじゃないかなと思うところもあって。これからどちらも頑張っていきますが、ちょっと1500m寄りに移行してくのもおもしろいかなと感じています。

ーー記録だけでなく、アメリカで目標としている大会はありますか?

 アメリカには全米学生選手権というのがあって、その予選が西地区と東地区に分かれて行なわれます。カンザス大は西地区で、予選に出場できるのが上位48人なんですけど、そのタイムが800mで1分49秒台前半になるので、目標としていきたい。1500mでもよりいいタイムを出して、今度は日本選手権にも出場してみたいです。

ーーその先の目標というのはありますか?

 先を見据えるのはなかなか難しいんですけど、2026年に地元の愛知県でアジア大会があって、2028年の五輪はアメリカのロサンゼルスで開催されるので、日本代表として出たいという思いはあります。

ーー競技以外での目標は?

 具体的なところはまだはっきり見えてきてないんですけど、現在はリベラルアーツ(教養学部)にいて、次のセメスター(学期)が終わったあとにはビジネス学部に入ってビジネス会計を専攻しようと思っています。そこでしっかり単位をとって、4年で卒業するというのは、最低限の目標になります。

 その後はまだわかりませんが、アメリカに残って日本で言うところのCPA(公認会計士)の資格をとったり、たとえばスポーツマネジメント分野を学んで、ビジネスとスポーツをかけ合わせたようなことができたら、ともイメージしています。

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