女子走高跳で注目の髙橋渚が自己ベストを次々更新中 1m90台とパリ五輪への挑戦 (2ページ目)

  • 折山淑美⚫︎取材・文 text by Oriyama Toshimi

【醍醐夫妻の指導の下、着実に成長】

 バドミントン部だった髙橋が陸上を始めたのは東京の練馬区立北町中学時代。体育の授業の走高跳を見た陸上部の顧問に大会出場を勧められ、出場した区大会と都大会で優勝したからだった。

 それから陸上を本格的に始め、進学した東京高校では男子走高跳の前日本記録保持者で、2008年北京五輪、世界選手権にも複数回出場経験のある醍醐直幸コーチ(現・東海大講師/陸上部跳躍コーチ)の指導を受けるようになった。

「入ってきた時はあまり特徴のある選手ではなかったけど、立ち姿は『もしかしたらトップ選手になるのかも』という印象は受けました。体が大きいわりには(身長173cm)授業でバトミントンやバレーボールをやる時の動きがよかったので、陸上選手っぽくない体の使い方が魅力的だなと。『陸上の体の使い方がわかれば可能性があるんじゃないか』と思って見ていました」

 醍醐コーチは、こう振り返る。

 髙橋は、高1の時は自己記録を伸ばせなかったが、高2で短い助走に変えると走高跳に合う体の使い方を徐々に身につけ、インターハイに出場。自己ベストも10cm更新する1m 72まで伸ばした。その頃から少しずつ頭角を現し始め、高3になった2017年には日本選手権に初出場して7位入賞。インターハイでも優勝し、9月にはフランスで開催された国別対抗デカネーションにも出場し国際舞台を経験した。そして、日本大に進学した1年目の2018年には日本ランキング4位となる1m80まで自己記録を伸ばしていく。

 その後、大学卒業まで記録は伸び悩んだが、実業団1年目の2022年に1m84を跳び、翌年は1m85と記録を伸ばしてきた。現在は醍醐コーチの妻で、東京高校でコーチをしていた奈緒美さんが髙橋の専任コーチだが、アドバイスをする立場でもある直幸コーチは、その成長をこう評価する。

「高校の頃は、ほかの選手のなかでも特別に秀でてはいなかったので、コツコツ体づくりをしただけでしたが、今は本当に走高跳の高い技術に求められる体の使い方が身についてきた感じです。高校時代は『その身長を使って跳びなさい』と言っていましたが、今は助走の1歩1歩の出力が上がり、それだけで記録が5cmぐらい上がってきている感じです。将来的にも1m90は跳んでほしい選手と思い、その先も見据えながら単純なことを教えていました。妻が見るようになり、それがうまくいく形になったのだと思います」

 髙橋を指導する醍醐夫妻が意識しているのは、スピードをしっかり出しながら、体を大きく使う跳躍だ。

「今は、(筋力が)パワーアップしたことでスピードも確実についてきているので、昔に比べるとある程度、遠く(バーから離れた位置)から踏み切り、大きなアーチを描いて跳べるようになりました。狭い空間(バーに対して、より近い位置で踏み切ること)で高く跳べばいいわけではないので、遠くから大きく(バーに対して)被せるように体を運べれば、(上方向に)踏み切らなくても1m90ぐらい飛べると思っていました。今後、その動きと踏切が合ってくれば、1m90を超えてくるという印象です」(直幸コーチ)

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