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世界陸上で3連覇を狙うもまさかの惨敗 競歩・山西利和が当初「原因がわからない...」と語っていた敗因を明かす (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nakamura Hiroyuki

 これらを含めても、今回の敗戦は捉えようによっては、来年のパリ五輪へ向けてよかったのかもしれない。結果的にこの1年「世界王者」という肩書きを背負うことなく、新しいことに挑戦した結果を咀嚼し直して過ごすことができるからだ。

「やっぱり求められていることから目をそらすとか、それを外して自分のスタンスを貫き続け、同じところに居続けようとするのはよくないと思います。最初に言ったように、何かを試して外してもいい。ただ、外して自分が元のいたところに戻ってしまうのは、結局成長ではないと感じています。

 今は、『去年ひっつけたもの(新しくやったこと)を今年はどうしようかな。来年どうしようかな』という感じで。今年はよくなかったので、気負うことなく来年はわりと気楽にいけるんじゃないかと思っています」

 もし今年が1年間何もない中間年で、主要大会がアジア大会だけだったら、今回のような教訓は得られなかっただろうとも言う。

「今はやるべきことがたくさんあるので楽しみですね。『この1年はよかった』という状態から何か違うことをしようと考えるのと、『これとこれが足りない』というのを突きつけられたうえで『じゃあ何を変えていこうかな』というのでは、取り組む感じは全然違う。目的の方向が明確なだけに、踏み出す一歩の力強さは違いますね。石橋を叩かなくてもいいから」

 これまでは常にメダルラインでの戦いをしてきた山西。そのなかで必要になってくる作業は「重箱の隅を突き、神に祈るように手順を踏んでいくみたい」だと言う。だが今回は、重箱の隅を突いただけでは追いつかないような実力の差を見せつけられた。

「だからこそ今回は、学生時代や世界陸上ロンドン大会を逃した時に感じた、シンプルに『実力をつけなければいけない』というところに帰ってこられたので、スッキリしている」

 こう言って笑顔を見せる山西はこの敗戦で、パリ五輪金メダル獲得への思いをさらに強くしている。

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