五輪挑戦3回失敗で引退覚悟→マラソン挑戦 「乗り気じゃなかった」競技で鎧坂哲哉がパリ五輪を目指す理由 (3ページ目)
【別大マラソンでMGC出場権を獲得】
2022年2月6日、鎧坂は別大マラソンに臨んだ。
35キロ過ぎから少数で競っていくなか、粘ってついていった。西山雄介(トヨタ)には1歩及ばなかったが、2時間7分55秒で2位に入り、MGCの出場権を獲得した。
「優勝できなかったのは悔しいですが、タイムも含めてある程度やれた感はありました」
近年、10000mを始め、個人種目では思うような結果を出せずにいたが、このレースは「鎧坂復活」と強く印象づけるものになった。
今年の10月15日、勝負のMGCを迎える。
前回は、大迫の練習パートナーとして、その走りを見守った。だが、今回は大迫を始め、強者たちとの勝負レースになる。そこで勝つために準備を着々と進めている。
「僕は他の選手よりもマラソン経験が浅いので、昨年11月にニューヨークシティマラソンに出場してきました。このレースはペースメーカーがおらず、タフなコースなので、そういうレースで世界のトップ選手との勝負を経験できればと思ったんです。そこでの6位入賞は自信になりました。後半、失速して足りない部分もわかったので、そこは修正しています。MGCもこのニューヨークのレースみたいにタフな展開になると思うので、個人的には楽しみです」
この大きな山を越えるとパリ五輪が見えてくる。ロンドン五輪もリオ五輪も参加標準記録を突破しながら出場できなかった。宗猛総監督には「おまえは、もう五輪に縁がないんだから」と言われてきたが、パリ五輪にかける気持ちは強い。
「監督の言うとおり、五輪に縁がないので、今回は行きたいという気持ちがあります。パリで勝負できるのはやはり特別。そのためにはつらい努力をしないといけないですけど、パリで走る姿をイメージするのは楽しいですし、そこで勝負したいですね」
パリ五輪では、もうひとつ東京五輪の時にかなえることができなかった目標がある。
「東京五輪前、大迫と合宿している時、『一緒に五輪に出たいね』みたいな話をしたんです。その時は、僕が出られずに終わってしまったんですが、今回はそうですね。一緒に出られたらいいなって思っています」
果たしてMGCで、鎧坂はどんなレースを見せてくれるのか。大学時代も社会人時代にも見せたことがない〝攻めのレース″を展開するのだろうか。もしかしたら、その先にパリへの道が開けているかもしれない──。
著者プロフィール
佐藤 俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。
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