神野大地「つまらないプライドは捨てて」トラックのレースに参加し、スピード練習は順調 仙台ハーフがMGCへの試金石になる (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun

 10000mをラクに走れたのは、5000mの刺激が効いたのもあるが、これまで継続してきたフィジカルの強化も大きいようだ。

「レースを走っている時、足が本当に疲れなくなったんです。前回のMGCの頃(2019年)は、ハーフで足がいっぱいいっぱいになっていたんですが、今年、丸亀で走っている時は、足自体は残り半分いけるという余力がありました。10000mは後半けっこう乳酸がたまってきたなと思うことが多かったんですけど、そういうこともなかった。うまく、速く走るためのフィジカルがトレーニングでかなり仕上がってきている感じはあります」

 神野のトレーナーである中野ジェームズ修一氏も、神野のレース後の筋肉の反応や疲労、練習中の筋肉の反応の出方を見て、「トレーニングが噛み合ってきている」と手応えを感じている。神野も厚底のレースシューズを活かすために、ウエイトトレーニングを行ない、大きい筋肉でインパクトを吸収し、その反発で進んでいくという走りを習得してきた。

 ここにきて、いろんなことがつながり始めているが、その確認の場として神野が重視しているのが、6月4日の仙台ハーフだ。そのレースには、MGC出場権を持つ川内優輝(あいおいニッセイ)、西山雄介(トヨタ自動車)、鎧坂哲哉(旭化成)、湯澤舜(SGH)、下田裕太(GMO)らが出場する。

「メンバー的にはけっこう揃っていますし、ハーフで牽制し合うということはないと思うので、けっこうハイペースで行くと思うんです。自分の現在地を推し量るにはいいレースになると思いますが、以前のように、うしろで無理せず、自分の状態さえ上がればいいというようなレースはしたくないですね。今回は、ヨロさん(鎧坂)の調子が抜けていると思いますし、西山選手とかトヨタ勢がどのくらいくるのかわからないですが、前でレースができる状態に仕上げていけそうです。MGCに向けて勝負をしたいので、タイムよりも順位にこだわっていきたいと思っています」

 春先から神野の表情は、明らかに変わってきた。

 練習したもの以上のものは出せないとよく言うが、その練習の質が高く、ハイペースでのマラソンで勝負できるところまできているのだろう。その力が本物なのかを確認し、ライバルたちの状態を見るうえでも、そして、この上半期の仕上げという意味でも、仙台ハーフは重要なレースになる。

(つづく)

PROFILE
神野大地(かみの・だいち)
プロマラソンランナー(所属契約セルソース)。1993年9月13日、愛知県津島市生まれ。中学入学と同時に本格的に陸上を始め、中京大中京高校から青山学院大学に進学。大学3年時に箱根駅伝5区で区間新記録を樹立し、「3代目山の神」と呼ばれる。大学卒業後はコニカミノルタに進んだのち、2018年5月にプロ転向。フルマラソンのベスト記録は2時間9分34秒(2021年防府読売マラソン)。身長165cm、体重46kg。

プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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