箱根駅伝2年連続シード落ち→エースが苦言→退部者が続出...関東インカレで見た東海大の今 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by スポニチ/アフロ

【エース石原翔太郎が感じているチームの変化】

 5000mではエースの石原が2位、五十嵐喬信(3年)が13分57秒59の自己ベストで7位入賞を果たした。2年時に大量の退部者が出た代から越、梶谷に続いてしっかりと走れる選手が出てきたのは、戦力的にはもちろん、来年度の編成を見据えても大きい。

 エースの石原は、雨のなか、留学生を始め、伊藤大志(早稲田大3年)、吉岡大翔(順天堂大1年)、三浦龍司(順天堂大4年)らが形成する先頭グループでレースを展開していた。残り200mのラストスパートで逃げきりを見せた三浦を追ったが、とらえきれずに2位でフィニッシュした。

「天候が悪かったなか、体力的に厳しいかなと思ったので後半まで我慢していました。ラストスパートの勝負になったんですが、あと少し届かず、悔しかったです」

 石原は今年、最上級生になった。

 前回の箱根駅伝は総合15位、惨敗とも言える結果に終わり、石原はレース後、チーム内の競技に対する意識や取り組みについて厳しい表情で、こう語った。

「復路で崩れたのは、チームの底上げができていないからだと思います。中間層を含めて個々がもっとレベルアップしていかないといけなかった。正直、その部分では物足りなさがありました。練習のなかでも追い込める選手とそれができない選手がいるんですが、もっと追い込める選手が出てこないといけない。自分はふだんはひとりで練習をしているんですが、そこに誰もついてこない。そこに、どれだけみんながついてこられるか。自分に続いたり、追いかけるレベルの選手が出てこないと来年も厳しい結果になると思います」

 果たして、石原から学び、そのうしろ姿を追う選手が出てきているのか。

 花岡は、昨年は「石原頼りのチーム」だったことを認めつつ、今年は高い意識で練習に取り組んでいるという。

「今回の関東インカレは石原さんとは日程や種目も違うので自分は同じ種目の選手とポイント練習をしてきたんですが、ふだんは石原さんと練習し、途中でペースアップした時には頑張ってついていっています。石原さん、越さんら強い選手からいいものを自分のなかに入れこんで力をつけて、今年は自分がチームを引っ張って(駅伝シーズンで)シード権獲得とか上位に食い込めるチームにしていきたいです」

 花岡のような意識を持ち、表現できる選手が出てきたのは昨年との違いだろう。

 石原も練習での取り組みなどで、選手の意識の変化を感じるという。

「前回の箱根の結果が悪かったので、そのためには何かを変えていこうという意識が強くなったと思います。練習は、基本は全員でしていますけど、意識と自主性が高まり、一人ひとりが一生懸命に取り組んでいます。生活面でも、寮でルールを守って規則正しい生活を送れるようになってきました」 

 昨年の2、3年生が反発し、ギスギスした感じはなくなり、花岡は「新体制になってからいい雰囲気で練習ができています」と、違いを実感している。変化の過程にあるチームにおいて石原は自分がやるべきことについて、こう考えているという。

「自分は日本選手権やユニバー(ワールドユニバーシティゲームズ)など、大きな大会が控えていますが、そこで結果を出してチームに勢いをつけていきたいと思っています。チームとしては、みんな意識が変わって、しっかり練習に取り組んでいるので、あとは各自が結果を出して、100回大会の箱根でシード権を獲れるようにしたいですね」

 越キャプテンが掲げた「箱根総合3位」という目標を石原に投げると、控えめな笑みを浮かべた。

「うーん、予選会を突破して、そこでどういう走りができるのかで、その目標が見えてくるんだと思います。越はしっかりしていますが、4年生としてもしっかり支えていきたいですね」

 東海大の再建のシーズンともいえる今季、関東インカレの結果からはまずまずのスタートをきったと言える。続く6月の全日本大学駅伝の予選会で、チームとしてどんな走りを見せるのか、そして、ユニバーから石原が戻ってきたあと、夏合宿で選手個々の成長を促進し、チームをさらにビルドアップしていけるのか。いくつかの大きな山を越えた先に、今年の東海大なら復活の尻尾を必ず掴めるはずだ。
 

プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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