「補欠はもういい」マラソン大塚祥平が狙うパリ五輪。MGCでは「30キロ以降、どれだけペースを上げていけるか」 (2ページ目)
大塚は、3人に及ばなかったが4位という成績を残した。そして、東京五輪のマラソン日本代表の補欠に指名され、準備を始めた。
「MGCという大きなレースで4位になれたのは自信になりましたし、補欠という経験もすごく貴重なものでした。東京五輪は1年延期になりましたけど、1年中マラソンの準備をしているわけではないのでその影響は特になかったです。ただ、補欠とはいえ、選ばれた以上は責任をともないますし、何かが起きて、自分に順番が回ってきた時、準備していなかったら後悔すると思ったので、MGCの前と同じ合宿をして、いい緊張感を持って練習をしていました。自分は選ばれた3人が何事もなく走れるのが一番だと思っていたので補欠が解除された時は正直、ホッとしました」
東京五輪マラソンの補欠は、レースの2日前に解除された。その日のうちに大塚は札幌からチームが合宿している釧路に向かい、合流した。
東京五輪のマラソン当日は、朝練習が終わったあと、30キロ地点からレースを見た。
「30キロからペースが上がったので、これからスローになったり、急に速くなるのかなって思ったらわりといいペースで進んでいきましたね。ペースが上がった時、自分だったら、どのくらい対応できたのかなって考えたんですが、30キロからの驚異的なペースアップは、その時の自分にはちょっと想像できなかったです」
目に焼きついたのは、キプチョゲ(ケニア)の金メダルを獲得した走りであり、ケニア、エチオピアといったアフリカ勢の強さだった。大塚は、画面越しに見た彼らの強さにただ驚くだけだったという。
「キプチョゲはとんでもなかったですね。30キロ過ぎに勝負に出て、ペースを上げたのもそうですけど、最後までひとりだけ動きが違ったので、改めて強いなと思いました。他のアフリカ勢も強かったんですね。五輪は夏のレースですが、アフリカ勢と冬のマラソンのハイペースの展開で勝負するのは、試合を見ていて難しいなと思いました。その条件で戦えるイメ-ジが湧かないですね。ただ、五輪や世界選手権など暑いコンディションのなかでは勝負できるようになりたいと思っています」
キプチョゲらの走りに刺激を受けた大塚は東京五輪後、パリ五輪を目指して走り始めた。2020年の福岡国際マラソンでは、転倒しながらも2時間7分38秒の自己ベストで2位に入った。2021年も福岡国際マラソンに出場し、4位でMGC出場権を獲得した。
「自己ベストを出した時は、キロ3分ペースだったので後半もそれほど落ちなかったんですけど、翌年に4位になった時は、最初からキロ3分を切るペースだったんです。この時はタイムというよりも勝負を意識していましたし、30キロまでは自分のイメージよりもいい感覚で走れました。でも、後半の10キロでペースが落ちてしまって......。やっぱりキロ3分をきるペースで行くと、後半のきつさが全然違うので、そのペースで行っても後半勝負できるようにしないとこれからのレースは勝てない。それが今後の自分の課題というか大きなポイントだなって思いました」
2023年の秋にはパリ五輪のマラソン代表を決めるMGCがやってくる。大塚が福岡で経験したように今のマラソンはキロ3分をきるペースで進んでいる。MGCも当然その流れでいくだろうし、そこで勝つためにはあるものが必要だと大塚は言う。
「今回は、前回のMGCよりも出場する選手が増えて、レベルも相当高くなると思いますし、ペースは間違いなく速くなると思います。勝負レースになるので、駆け引きもありますが、後半の勝負になるでしょう。30キロ以降、どれだけペースを上げていけるか。そこで、どれだけ自分が勝負できる状態にいるのかがすごく重要になってくると思います。そのためには、練習の質を高め、レース当日に疲労を残さないようにしっかりと準備していくことが大事ですね」
前回のMGCは4位で、惜しくも次点となり、東京五輪の補欠人員として調整を続けた。出場する選手たちと同様に調整をして、レースに備えたことはいい経験になった。だが、選手である以上、日の丸をつけて走ることが目標になる。
次回のパリ五輪は、大塚にとって、どういう位置づけになるのだろうか。
「五輪は、陸上競技にとって一番の舞台ですし、そこに向けて挑戦できるということは、人生でもなかなかないことだと思うんです。ただ、今回は挑戦するだけではなく、勝ってパリの街を走りたいですね。補欠は経験したので、もういいです」
その本番前に大塚は、自分に課していることがある。
「マラソンでまだ勝ったことがないので、1回は勝ちきりたいですね。その手応えを得て、MGCに臨めれば何かが見えてくると思います」
【写真・画像】今季の大学駅伝で注目のランナー10人
2 / 2