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「女子選手は指導者に依存させないと伸びない」は正しいのか? 石塚晴子が陸上界の「根拠なき通説」に斬り込む理由 (2ページ目)

  • 堤 美佳子●取材・文 text by Tsutsumi Mikako

高校卒業後に伸び悩む選手を多く見てきた

 冒頭のツイートには約1000件の「いいね」が集まった。東大医学部(今春卒業)で女子3段跳び学生王者の内山咲良選手は、石塚選手の投稿にこうコメントした。

"大学に入ってから、指導者に毎練習見てもらえるような密な関係だったのがもっと薄い関係になったのもあって伸び悩んで、練習や競技に対する姿勢も自分で考えるようになってから記録が伸びた。競技も自分の人生の一部で、それにまつわる選択を自分のものとしてできると変わってくるのかもしれない。"(原文ママ)

 女子選手は指導者に依存させないと伸びないーー。このような「通説」について、石塚選手は「高校までの決まったメニューをやるという競技生活からステップアップしていった時に、自立して競技できる人が少ない(結果出した女子選手が少ない)という文脈で語られることが多いです」と語る。

 石塚選手は実際に、インターハイでトップレベルの記録を出していたにもかかわらず、卒業後に伸び悩む女子選手の姿を多く目にしていた。その要因として、高校までの部活動では、「コーチから与えられたメニューや目標をクリアするために走っていれば結果が出た」というケースが多いこと。

 また、教育活動の一環として厳しいルールで選手を管理した結果、自己管理能力を失ってしまった選手が多いこと。そして「ひとつの区切りとして卒業した時に、自分を保てなくなる選手がいるのではないか」と石塚選手は自身のnoteで分析している。

「高校卒業後に環境が変わって伸び悩む選手を多く見てきたので、『じゃあ環境を変えなければいいのでは』と考え、かつ当時の指導者からもそう言われて内部進学の道を選びました。高校時代の指導者も練習メニューも設備もすべてそのままで、高校4年目が始まるような感覚で進学できる環境でした」

 しかし、大学1年の5月には自己ベストを更新したものの、石塚選手自身も「伸び悩む女子選手」のひとりとなってしまう。その後、大学を離れるという決断を1年の冬に下す。決断をあと押ししたのは、大学1年の2月に訪れたドイツ・ベルリンでのトレーニングだった。指導者と選手が対等な関係でディスカッションをしながらメニューをこなす様子や考え方に衝撃を受けた。

「当時は、自分がやってみたいと思ったトレーニングにチャレンジしたくてもできない環境でした。競技で結果を出さなきゃいけないという焦りも相まって、今いる環境にフラストレーションがたまり始めていた時期でした。そこに(ドイツでの経験で)『こんなに選手主体で考えてくれるコーチがいるんだ』『自分もこんな陸上がしたい』と火がつき、大学を辞める決意をして帰国しました」

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