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駒澤大が箱根駅伝優勝で3冠達成。勝因は全区間5位以内の選手層の厚さと、山の区間での思い切った1年生起用にあった (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kishimoto Tsutomu

 それに対して駒澤大は山の5区と6区で、大八木監督の1年生起用が当たった。

「山川は登りが得意と本人も言っていたので、練習で走らせてみて向いていると感じた選手。前回区間4位の金子伊吹(3年)もいたが、今季は故障気味で戻ってきたのが11月と不安もあったので、いい走りをしていてスタミナもある山川を思い切って使った。6区の伊藤蒼唯も1年間故障もなくて本当に練習ができていたし、下りの適性も感じていたので思い切って使った」(大八木監督)

 復路30秒差スタートの中央大には、前回区間5位の58分48秒で走った若林陽大(4年)がいて、6区終了時点で並んでいれば駒澤大と中央大の勝負はわからなくなるところだった。だが伊藤が周囲の予想を上回る58分22秒の区間賞の走りをし、中央大との差を47秒まで広げたことで、駒澤大が総合優勝へ大きく近付いた。

 中央大の藤原正和監督は、駒澤大の強さをこう語る。

「僕らは6区で追いついてしか勝負できなかった。復路に(駒澤大の)佐藤(圭汰)が入っていなくて下りが1年生ということでチャンスが少し増えたかなと思ったが、下りで伊藤があれだけいい走りをしたところが駒澤大の強さだと思う。大八木監督の指示もあったと思うが、各区間とも最初は少し早めに入り、中盤は少し落として我々と同じペースにし、15~18kmからもう1回頑張らせる走りで、少しずつ差を開かれてしまった。そういう意味では、やはり試合巧者だなと感じました」

 藤原監督は、全区間をミスなく終えた2位という結果を、「うちは強化の階段を上がるという意味で今年は3位以内を目標にしていたが、これで選手たちも『優勝したい』という気持ちになると思うので、この悔しさを来年に生かしたい」とも評価する。

 結局、先頭に立つアドバンテージを生かした駒澤大が、7区で3秒縮められた以外ではタイム差を開き、結果2位に1分42秒まで差をつけて優勝した。

 一方、青学大も9区の岸本大起(4年)の区間記録に12秒まで迫る走りで3位まで順位を上げた。5区の若林が欠けたというだけで復路は後手に回って敗れる結果にはなったが、誤算の山の2区間が駒澤大と同タイムだったら、結果11秒差だったという底力の確かさも見せ、来年は中央大とともに3強を形成しそうな雰囲気を見せる。

 駒澤大は、エースが体調不良のほか、エース格の2選手も走れないなか、大八木監督はミーティングで選手たちに「区間賞を獲らなくても、全員が区間5位以内だったら総合優勝はできる」と話した。結果はそのとおりの区間賞1区間、2位が3区間、3位が3区間で4位が2区間、5位が1区間での優勝。駒澤大は選手層の厚さに加え、大八木監督の山に1年生を起用する勝負感の鋭さで、有言実行の3冠獲得を果たした。それは退任する大八木監督への、選手たちからの慰労のプレゼントでもあった。

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