箱根駅伝4区で途中棄権の翌年から劇的な2連覇。神奈川大・大後監督が語る、強いチームに必要なこと (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 産経新聞社

【大後監督が考える、強いチームの必須条件】

 強いチームに必要な要素について、大後監督は、こう語る。

「まず、よきライバルがいること。自己内省力があること。そして、安心感です。この3つがフィットしたのが、最近で言うと2017年全日本大学駅伝で優勝した時のチームです。健吾はエースで、山藤とはライバルだった。選手一人ひとりが体調管理、練習について自立していた。レギュラー以外の選手の思いが、走った選手にのりうつって、それが安心感につながった。やっぱり仲間のためにという思いがあると、もうひと踏ん張りできるんです。エースがいることの安心感も大事です。あいつがいるから大丈夫だという余裕が生まれてくる。自分がやらないといけないと思うのは大事ですが、度がすぎるとダメです。エース存在の安心感が無理の歯止めをかけていると言えます」

 だが、それだけではチームは本当の強さを身につけられない。掛け算による確変がチームには必要だと大後監督は語る。

「チームの本当の強さは、レギュラー選手の足し算ではなく、それに何かがかけ合わさったものだと思うんです。うちは40名の部員がいて、箱根で走れるのは10名だけ。その残りの30人のいろんな気持ちが1年間の営みのなかでかけ合わさっていくことが大事です」

 チームを強くするためには、そうしたチームビルディングの思考や方法論が大事だが、同時にスカウティングが非常に重要になってくる。

 大後監督は、どういう視点で選手をスカウトしているのだろうか。

「今の高速駅伝の流れに乗るためには、スピードのある選手を獲得しないといけませんが、私は、将来マラソンができる選手に目が行きます。具体的には、下半身より上半身の使い方、肩甲骨の使い方がうまく、姿勢がいい選手です。脚は大学に入って鍛えられます。しかし、上半身の動きを股関節に連動させることを考えると、肩甲骨の柔らかさを持っている選手が効率のいい走りを獲得します」

 いかにいい選手を集めて、育成できるか。その両輪でチームの強度が変化する。しかし、スカウティングは近年、激化している。よい素材の選手には多くの大学が勧誘に訪れる。大後監督も数年前、そのスカウティングで手痛い経験をした。

「今の3年生は、山崎(諒介)が予選会で結果(部内3位)を出して、他の3年生も少しずつ成長しています。しかしながら、彼らは1、2年の時からレギュラークラスで練習できている選手ではなかった。この学年はスカウティングで、少々高望みをしてしまい、レベルの高い選手を追いかけすぎた。目をかけた高校生がなかなか獲得できず、そういうなかで入ってきた学年で、彼らには苦労をかけています」

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