東洋大が区間賞ゼロも総合3位。酒井監督が挑戦した経験値に頼らない戦略 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 松山は大学にきてから、1万mやハーフマラソンは走っていなかったものの、5000mでは10月に13分48秒80の自己新をマークしている。高校時代も3年生の時に全国高校駅伝の1区を走って区間2位、都道府県対抗駅伝では、5区で区間賞を獲得するなど、ロードには強いタイプだ。

 全日本でもエース区間の2区で区間7位の成績を残し、酒井監督は、かつて設楽啓太・悠太を1年から2区と3区に起用したり、服部勇馬を1年で9区、2年からは2区で使っていたように、育成過程を思い描いている。

 松山について酒井監督は「終盤の上りは未知数だから、1時間8分を切れば合格点」としていたが、終盤までしっかりと走り、1秒差で日本人1位を逃すも1時間7分15秒で区間4位になった。19秒前に走り出していた3位の東海大には、4秒差の5位でタスキを渡し、しっかりと流れを作った。

「3区の前田義弘(2年)にはもう少し粘ってほしかったな、というところはあります(5位は維持したものの区間8位)。創価大は葛西潤選手(2年)が、後ろから見ていても『うまいな』と思う走りをしていたのが、4区での首位と往路優勝につながったと思います。うちも3区がもう少し粘って4区終了時点で前が見える位置にいれば、往路優勝はあるかなと思っていました。

 その4区を吉川洋次(4年)に任せた理由を酒井監督はこう話す。

「4回目の出場で、天気図を見て『今回はここ数年とは違って向かい風が吹くんだろう』という予想もありましたが、向かい風にも強いフォームで、上りも苦にならず後半にも強い。1年の時に4区を走っている安心材料もあり、彼が一番適任だと迷いなく起用しました」

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