箱根駅伝のスターが実業団の監督となり見えたもの「そろそろ改革しないと...」 (4ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 渡辺監督は、実業団のチームや実業団連盟に対して一歩踏み出して発言していくためには、結果が必要だと考えている。ニューイヤーで優勝するか、あるいはチームからオリンピアンを輩出する。そうして初めて住友電工の監督としての発言に説得力が得られると思っている。だが、時間が潤沢にあるわけではない。

 コロナ禍の影響で社会が変わり、多くの企業が経営的な厳しさにさらされている。東京五輪が終われば、アスリート支援に冬の時代がやってくるという声も聞く。

「DeNAが規模縮小を発表しましたが、今後はそういう企業が増えていくでしょうし、東京五輪が終わればサポートの仕方が変わっていくかもしれません。陸上界も今までのようにスポンサーがついて、テレビ局がついてという花形商売のような考えではつづかない。危機感を持って変えるべきところは変えていかないと。その中で私ができることは住友電工の陸上競技部を長く存続させていくことです。企業スポーツがなくなると学生の就職先がなくなりますし、陸上界もしぼんでいってしまう。社会が変わる中でも生きていける、そして私がいなくなっても存続できるようにチームを作っていきたいと思っています」

 渡辺監督の言葉からは、強い覚悟が伝わってくる。就任から5年、選手育成、強化に手応えを感じているのだろうか。

「まだまだです。田村も遠藤もまだ日の丸をつけていないですし、ニューイヤー駅伝も11位が最高なので‥‥富士山の5合目に向けて、車を走らせている状況です。この先、本格的に上を目指せば困難も多くなる。歩いて山頂まで行くには、もう少し時間がかかりそうですね」

 来年も優秀な選手がチームに入ってくるだろう。

 渡辺監督が欲する選手が加入し、選手層は着実に厚くなっていく。いずれ、日の丸ランナーの誕生が実現し、ニューイヤー駅伝では10位内、トップ5、優勝へと確実に階段を上がっていくはずだ。そうして住友電工独特のスタイルで結果を出し続けた後に、実業団に「改革」という大きな風が吹くだろう。

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