箱根駅伝の名勝負。抜きつ抜かれつ「紫紺対決」の戦略合戦はすごかった (4ページ目)
そして迎えた本番。1区の入船は、トップと13秒差でいい流れを作った。次は必ずトップに立てると見ていた2区の岩水だったが、15km過ぎの給水で足首を少し捻ってリズムを崩し、トップの法大には46秒、駒澤大にも36秒遅れる3位と誤算の走りになった。
「この条件(強い向かい風)なら、少し力が劣っても大差をつけられることはないはず」と起用した3区の中川拓郎(2年)が、一時は駒澤大に並んだものの、終盤に崩れて5位。それを救ったのは、箱根の直前になって復調してきた4区の野口で、向かい風でペースの上がらない駒澤大と中大、帝京大の2位グループに6km過ぎで追いつくと、ラスト3kmからのスパートで単独2位に上がって1位の法大を29秒差まで追い込んだ。
5区の奥田は前年に区間記録を樹立している中大の藤原正和(2年)に最後は競り負けたが、8秒差の2位で往路のゴールを果たした。それに対して駒澤大は4区がラスト3kmで失速したのを5区も引きずり、4位で往路を終えた。
そして翌日の復路は、順大の沢木監督の狙いが当たった。
「往路の結果を見て復路はうちのペースで行けると思った。勝負のポイントは4、5、6、7区と考え、それでダメだったら9区と思っていたので、7区が終わったところで勝てると思った」と話すように、6区は下りのスペシャリストの宮井将治(4年)が区間新で走り、7区終了で駒澤大との差を2分47秒に広げた。
続く8区で区間1位の走りをした駒澤大が28秒差まで詰めて、前回優勝の意地を見せた。だが、順大の9区にはエースの高橋謙介が配置されていた。駒澤大の9区には、高橋正仁が配置されたが、トラックの持ちタイムの実力からいくと順大の高橋謙介の方がはるかに上だった。
そこで、駒澤大の大八木コーチは最初から突っ込む走りを指示。狙いどおり高橋正仁は7kmで追いついた。
高橋正仁はレース後こう振り返っている。
「正直言って自分もビビっていた。でも距離には不安がないし、練習もしっかりやっていたから、やれるところまでやろうと思った」
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