神野大地が目指すは三歩先より半歩先。初の日本代表で「金を獲りたい」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 個人的な感想だが、今の神野を見ているとどっしりと落ち着いた印象を受ける。厳しい選考レースを戦い終え、プロランナーとしてどう進むべきか、迷いがなくなったからだろう。実際、神野は自分の立ち位置を冷静に把握している。

「僕のことを変わらず注目してくれる人はいると思うんですけど、大きい期待を持って見ている人は少ない気がするんです。僕に日本記録を望んでいる人はいないでしょうし、メディアも『神野が日本記録を破るから取材に行こう』という感じではないと思うんです。僕のプロとしての活動や取り組みを理解し、共感して、みんな応援してくれているのかなと。今回のレースはそういう人たちの期待に応えたいと思っているので、モチベーションは高いですよ」

 初めての日本代表、初めての中国でのレース。ただ、目標はひとつだ。

「タイムは何分でもいい。金メダルを獲りたい。今まではどうしても『山の神・神野大地』でしたけど、金メダルを獲れば『神野はマラソンをやっているんだ』って多くの人にわかってもらえると思うんです。プレッシャーというよりはチャンスだと思っているので、ここで決めたいですね」

金メダルに強い意欲を示す神野だが、それだけ今の走りに自信を持っているのだろう。

「自滅だけは気をつけたい」と言うが、その心配もなさそうだ。スローペースだろうが、ハイペースだろうが、今はどんなレースにも対応できるだけの足を備えている。

 金メダルを獲って、1月のケニア合宿を経て、東京マラソンへ----。

 いい流れをつくることができれば、2時間8分台という目標もより現実味を帯びてくるはずだ。

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