2019.11.06

東海大が主力抜きで全日本制覇。
箱根で史上最強メンバーが完成する

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

東海大・駅伝戦記 第67回

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 アンカーの名取燎太(3年)が5回、宙を舞う。大学生活で初めて味わう胴上げに笑みが止まらない。続いて両角速(もろずみ・はやし)監督が5回、宙を舞った。

 11月3日に行われた全日本大学駅伝は東海大が16年ぶり2度目の優勝を果たし、今シーズン初タイトルを獲得した。

「ヒヤヒヤしましたが最後、名取がよく走りました」

 両角監督は、そういって表情を崩した。

名取燎太がトップでゴールし、東海大が16年ぶり2度目の全日本大学駅伝優勝を果たした 8区の名取は、トップを走る青学大の飯田貴之(2年)と2秒差で襷(たすき)を受けると、4キロ過ぎで並び、一気に勝負に出た。そこで飯田がついてこられず、勝敗は決した。

 レース後、両角監督は「流れ的には塩澤(稀夕/3年)が順位を上げてリセットできたこと。その次の西田(壮志/3年)の走りが大きかった」と語った。だが、レースが大きく動いたのは、4区の西田のあとだった。

 5区の市村朋樹(2年)がトップに躍り出て、6区の郡司陽大(4年)は区間賞の走りで貯金をつくった。7区の松尾淳之介(4年)は青学大の吉田圭太(3年)に詰められ、抜かれながらも、最後は粘った。彼らの健闘と踏ん張りがあったからこそ、歓喜のエンディングがあったのだ。

 5区、先頭を走る東洋大の西山和弥(3年)と26秒差の2位で襷を受けた市村は、軽快な走りで前を追った。

「西山さんが見える範囲で襷をもらえたので、とりあえず詰めていこうと。でも、走る直前に両角監督から電話で『そんなにすぐに詰めなくてもいいから、じっくりいこう』と言われて。自分はあまりそういうのが得意じゃないので……ただ、意識はしていました」

 意識はしていても、前が見えると追いたくなるのがランナーの性だ。じっくりと言われたが、市村は突っ込んでいった。前に近づいている感覚でいたが、不思議なことに沿道からは、西山と開いているような声が飛んできた。

 中継地点では、監督車から降りた両角監督から「5秒詰めたぞ。前を見ていけ」と檄を飛ばされた。7キロぐらいから西山が少しずつ落ち始め、9キロ地点でとらえると、9.3キロで市村が前に出た。