2019.09.27

朝原宣治が9秒台トリオに期待。
「リレーで金メダルのチャンス」

  • 佐久間秀実●取材・文 text by Sakuma Hidemi
  • 谷本結利●撮影 photo by Tanimoto yuuri

短距離界レジェンドインタビュー
朝原宣治・後編

(前編はこちら>>)

 9月27日からカタールのドーハで開催される世界陸上の男子4×100mリレーで、日本初の金メダル獲得の期待が高まっている。100m9秒台の選手が、サニブラウン・ハキーム、桐生祥秀、小池祐貴の3名となり、日本史上最強のメンバーで戦える可能性があるからだ。来年の東京五輪に向けた指標になる世界陸上の展望を、朝原宣治に聞いた。

世界陸上のリレーで起用が濃厚な、(左から)小池裕貴、桐生祥秀、サニブラウン・ハキーム photo by Matsuo/AFLO SPORTS――6月に行なわれた日本選手権の男子100mと200mをどのように見ましたか?

「これまでの日本選手権よりもレベルと注目度が高くなり、選手たちは実力を発揮してすばらしい大会になったと思います」

――サニブラウン・ハキーム選手が100mと200mを制しましたが、成長した点はどこでしょう?

「本人も口にしているように、スタートから中盤までの走りがスムーズになり、体つきがかなり変わりましたよね。今後は、アジア記録の9秒91がターゲットになるでしょう」

―― 一方、100mで2位、200mで3位になった桐生祥秀選手の印象は?

「桐生選手は、100mで9秒98を出した時は47歩で走っているんですが、日本選手権の時は48歩と1歩多く、タイムも10秒16とよくなかった。隣のレーンにサニブラウン選手がいたことで全身に力が入り、余計なことを考えているように見えました。自分のレースに徹することができれば、もう少しタイムが出るはず。サニブラウン選手には勝つためには、あと一段階頑張る必要がありますね」

――日本選手権後に、小池祐貴選手も9秒台を出しました。

「小池選手は学生時代から期待はされていたものの、どちらかといえば桐生選手らの陰に隠れて、特別な選手という位置づけではありませんでした。大学時代にはスランプに陥っていましたが、別人のように急成長を遂げて9秒台を出した。そんな小池選手を見て、選手個々の可能性を引き出すための指導や情報、モチベーションの重要性を感じましたね」

――朝原さんは「100mは人間力」という言葉を残していますが、そこにはどのような意味が込められているのですか?

「100mはシンプルな競技で、サニブラウン選手みたいに体が大きくて力がある人が勝つという単純なものではない。多くの人のアドバイスを受けて練習を積み重ね、技術とメンタルの全てが整った状態でスタートラインに立ち、勝負をしなければなりません。だから、『人間の力の全てが、短い100mに注ぎ込まれる』という意味になります」