世界記録保持者は来月復活。日本の競歩は五輪金メダルに近づいている (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 その点で今回の上位3人は、世界基準でも終盤まで戦える力があることを証明した。今村コーチはこれからの課題を「ここ数大会は日本選手権もラスト1kmや500mの勝負になっていますが、大きな国際大会では中盤からレースを動かして、いかに単独歩にするかという戦いになっている。だから、日本選手も中盤から今日の後半の藤澤のようなレースができないといけないし、単独歩になっても乱れなく歩ききることが大事」とも言う。

 9月の世界選手権代表に内定したのは優勝した高橋だけで、残り2枠は3月の能美大会まで持ち越される。その中心となるのは、世界記録保持者の鈴木だろう。故障が2週間弱と長引いたことで、大事をとって能美大会に照準を合わせることになった。チームに帯同した今回も前日の練習で、ラスト1kmは余裕を持って歩いていたという。

「痛めていた股関節もリハビリをしていればまったく問題ない状態。1月の合宿では1時間18分を切るくらいの歩きはできていました。今年は挑戦するという意味であえてレベルの高い練習をしてきました。東京五輪では一発を狙いたいので、今年それをやっておかないと来年にちょっと余裕がなくなる。1月の合宿では最後にケガをしましたが、レベルの高い練習ができたので、来年も同じような練習で余裕を持ってできれば、世界記録より圧倒的に速いタイムも狙えるようになると思います」

 一昨年までの日本選手権は、鈴木と高橋、藤沢のうちふたりが抜け出して勝負する展開が多く、世界大会代表もこの3人の誰かが出場する形だった。しかし、最近はナショナル合宿の成果も出てきて、学生が力をつけてきた。東京五輪出場へ向けて、安閑としていられない状況になった。

 国内のレベルがより高くなったことが、今年の世界選手権や来年の東京五輪での活躍につながるはず。そんなことを予感させる争いは、今回だけではなく3月の能美大会でも見られそうだ。

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