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東大生ランナーが最後の箱根に懸ける思い。
「学連をひとつのチームに」 (3ページ目)

  • 高橋憲治●文 text by Takahashi Kenji
  • photo by Matsuo/AFLOSPORT

 近藤の仲間といえば、東大陸上運動部の仲間が第一にあがるが、学生連合のチームメイトも大切な仲間だ。学生連合は監督も選手も毎年入れ替わる。チームカラーも毎年変わる。近藤によれば、4年生がどのように空気をつくるかによって学生連合チームの雰囲気が決まるらしい。上智大の外山正一郎をはじめ顔見知りの選手も多い今年のチームは、「4年間で一番」だと近藤は言う。

 近藤には、前回の学生連合チームの上級生から受け継いだ思いがある。矢澤健太――芝浦工大4年だった矢澤は箱根駅伝予選会で選出メンバー中9位の成績を残しながらも、最終的に補欠にまわっていた選手だ。しかし近藤のインフルエンザもあり、矢澤に出番が回ってきた。

 1231日にエントリーを聞かされたという矢澤は各校の準エースが集まる1区を力走。準エースたちがつくり出す速いペースに矢澤は挑戦し、粘った。最後は20位の選手から1分弱ほど遅れたが、鶴見中継所で学生連合2区の長谷川柊(しゅう/専修大)に白い襷をつないだ。矢澤は「補欠でしたが、ずっと準備はしていました。持っている力は出し切れたと思います」と最後の走りを振り返っている。

 その日、近藤は「矢澤さんに迷惑をかけてしまったかな」と思いつつ、箱根駅伝を実家のテレビで観戦していた。矢澤が自分の限界に挑戦して集団に食らいつく姿をテレビで見た。気持ちが昂ぶり、揺さぶられた。

「『矢澤さんの最高の走りに感動した』という言葉だけではとても言い尽くせない感情でした。矢澤さんは補欠登録。『チームに万が一のことがあってもいいように準備をする』といっても、サポートメンバーとして気を配ることはたくさんあります。さらに矢澤さんは4年生で引退する立場。もう大会もないし、卒論もあります。そのような状況でも自己ベストのペースで追走できるほどに、矢澤さんは最後まで選手をやり遂げていました」

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