大迫傑が分析する成功の秘訣と「オレゴン・プロジェクト」加入の成果
【大迫傑インタビュー 後編】
シカゴで"日本マラソン界の時計の針"を2時間5分台に動かした大迫傑(すぐる:ナイキ・オレゴン・プロジェクト)。世界の強豪が集うワールドマラソンメジャーズのレースで3位(2時間5分50秒)という結果については、「わりと冷静で、練習をやってきた成果が出たなという気持ちが強いです」と語る。
米国でのトレーニング、今後について語る大迫(写真提供:NIKE) 大迫が所属する「ナイキ・オレゴン・プロジェクト」は、「ケニア、エチオピアらアフリカ勢と戦えるアメリカ人選手の育成」を目的に、2001年に設立された中長距離チームだ。加入の条件である「将来、オリンピックや世界選手権でメダルが取れる可能性のある選手」を満たした男女10名ほどの精鋭が、アメリカ・オレゴン州ビーバートンにあるナイキ本社を拠点にトレーニングを行なっている。チーム内の競争を高めるために、現在はアメリカ以外の選手も3人在籍しているが、その中で大迫は2015年春に加入を許されたアジア人唯一のメンバーだ。
オレゴン・プロジェクトはトレーニングに関して「シークレット」を貫いており、大迫も具体的なことは話さない。ただ、3回目のマラソンとなったシカゴに向けて、練習は順調にこなすことができたという。9月4日のレイバー・デイ・ハーフマラソンは、独走で日本歴代9位の1時間1分01秒をマークしている。
「トレーニングに関しては距離も増えて、質も上がりました。そのなかで、動きを意識しながら取り組んできて、多くの練習ですごくいいフォームで走れたんです。故障につながるような張りも感じなかったことに手応えをつかんでいました。これまでと同じで、レースの流れに沿って、いかに勝負するのか。とにかく10月7日に自分の体調を合わせることだけに集中していました」
その結果が2時間5分50秒の3位。初マラソンのボストン(2017年4月)が2時間10分28秒、2回目の福岡国際(2017年12月)が2時間7分19秒なので、確実にステップアップしている。3戦目で日本記録に到達した大迫にとってマラソンは簡単なものなのか。それとも難しいものなのだろうか。
「マラソンはシンプルであり、奥深いと感じています。シンプルだと思うのは、やったか、やらないかがもろに出る競技だからです。奥深いと思うのは、スタートするまでの時間の使い方、レースに向かうプロセスが自分にとってすごく意味のあることだと感じている部分です。僕にとってマラソンは自分を見つめられる場所であり、達成感を得られる場所だと思っています」
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