東洋大が異例のアメリカ合宿。駅伝3冠に向け「秘密兵器」を試用した (2ページ目)

  • 酒井政人●文 text by Sakai Masato
  • photo by Nakanishi Yusuke/AFLO

 17時間を超えるレースを終えた酒井監督は、「目標タイムより1時間以上遅くなりましたが、選手たちのいろんな局面が見えました。今後の強化や駅伝の起用方法の参考になると思います」と話した。

 日本の長距離界は、「夏合宿=走り込み」という構図が明確になっているが、米国での日々は少し様子が異なる。3年生以下のメンバーで今年の正月の箱根駅伝で往路Vを勝ち取った東洋大は、さらなる進化のため、Aチーム14名が8月21~28日に「米国合宿」を敢行したのだ。

「夏合宿は本来であれば距離を踏んで底上げをする大切な時期ですが、『世界を知る』という意味でも異文化に触れさせ、新しい刺激を彼らに与えたかった。米国にはナイキの本社もありますし、オレゴン・プロジェクトには世界トップクラスの選手もいますから。ただ海外旅行をしただけでは経験にならないので、ある程度の緊張感と勝負をする。これまでにない駅伝をすることで、自分の殻を破り、チームの結束を高めていくという狙いもあります」(酒井監督)

 東洋大の選手たちは、米国合宿中にナイキ・ワールド・キャンパス(ナイキ本社)を訪問。酒井監督と今年6月の日本選手権1万mで学生トップの4位に入った西山和弥(2年)は、ナイキ社員でも"シークレットな領域"になるスポーツリサーチラボにも特別に入室した。西山は3種類のシューズを履いて、実際にデータを測定している。

 そして現地では、オレゴン・プロジェクトに所属する大迫傑やピート・ジュリアンコーチとも交流した。西山は「5000mに苦手意識があるが、どうしたらいいのか?」という悩みについて大迫からアドバイスを受け、相澤はマラソンをする時期について、ジュリアンコーチに個人的な質問をぶつけている。そして、ふたりとも「"スピードの重要性"を再確認した」という。

「外国のカルチャーを経験することで、日本という国はもちろん、チームと自分を理解することにつながります。成長するためには、現状を理解することがスタート地点。それを経験できてよかったなと思います。様々な交流がありましたし、すごくいい刺激がありました」と酒井監督が言えば、西山も「世界のトップ選手しか入ることができないラボにも入れていただいたことは貴重な経験ですし、商品開発の裏話も聞くことができて、勉強になりました。普通の夏合宿ではできないような経験をたくさんできたのは東洋大だからですね」とチームに感謝した。

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