痛恨の極み。3大駅伝選考へ重要な夏、好調な東海大3年を襲った事件 (4ページ目)

  • 佐藤俊●文・写真 text&photo by Sato Shun

 浮かない顔をしていたのが、小松だ。

「まだ、立ち直れていないです」

 実は、3日前の深川で開催されたホクレンロングディスタンスでのアップ中、荷物が盗難にあったのだ。携帯電話、財布、それにナンバーカードを失い、その日のレースに出場できなかったという。

「深川では札幌から両親が見に来てくれていたし、走る前の感覚もすごくよかったんです。コンディションも涼しくて、風もなく、ナイターで最高の環境でした。そこで13分台は十分に狙えるし、勝負できるなと思っていたので......」

 悔しさをむき出しにしたのは、春から5000mの流れがとてもよかったからだ。5月の『ゴールデンゲームズ in のべおか』では5000mを走り、140877の自己ベストを出した。

 さらに、7月ホクレンロングディスタンスの初戦である網走大会では、13分59秒51と初めて13分台を出し、またも自己ベストを更新した。深川では、さらに自己ベスト更新の環境が整っていただけに、盗難によってチャレンジするチャンスを失ったのは痛恨の極みだった。

「網走でのタイムは1359秒だったんですけど、まだ余裕があったので、いいレースができれば40秒台は狙えそうだなって思っていました。深川では、その40秒台を行ける感覚があったので、走れなかったことが本当に悔しかったです」

 小松は肩を落とし、そう言った。

 この1万mは、深川でのレースに参戦できなかったために急遽出場が決まったが、盗難のショックが尾を引き、なかなか気持ちが入らなかったという。

「でも、これで春のレースが一段落したので切り替えたいですね。乃木坂46の生田絵梨花さんのファンなので、少し趣味の時間に入らせてもらおうかなと思います(笑)」

 最後は盗難事件に遭うという嫌なオチがついたが、全般的には悪くないトラックシーズンだった。昨年までは3大駅伝にまったく絡めなかったが、今シーズンは今後の調子次第では絡んできそうな気配だ。両角監督も「出雲も全日本も昨年と同じメンバーでは今年は勝てない」と、新しく台頭してくる選手たちの期待している。小松は言う。

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