100m王者は山縣亮太。9秒台連発の中国勢にアジア大会で勝てるか

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 6月23日に行なわれた日本選手権の男子100m決勝は、誰が勝つのかわからない緊張感に包まれていた。前日の予選と準決勝を見れば、記録でリードしていたのは、予選を10秒13、準決勝は10秒19で走った山縣亮太(セイコー)と、予選10秒15と準決勝10秒16を出していた桐生祥秀(日本生命)だった。

日本選手権で9秒台は生まれなかったが、三者三様で手応えをつかんだ日本選手権で9秒台は生まれなかったが、三者三様で手応えをつかんだ しかし、山縣曰く、予選と準決勝の走りは万全ではなかったという。

「予選はスタートで少し出られなかったので(準決勝では)ちょっと修正をかけたつもりでしたが、あまりかかっていませんでしたね。予選では起き上がりがちょっと早かったので、(準決勝は)少し頭を下げて中盤以降の加速へスムーズにつなげていくイメージでしたが、イマイチでした」

 そんな走りになったのは、予選に続いて準決勝も同走選手のフライングでスタートをやり直した影響もあったのかもしれない。

 一方の桐生は、予選を10秒15で走ったとはいえ、少し力みを感じさせたが、準決勝は思惑通りの走りに修正した。

「予選はスタートでちょっと遅れた感じがあって自分でもビックリしたので、準決勝はそれを少し修正しました。予選よりは前半でずっと頭を下げているように意識して、スピードを上げるという部分で予選と比べてどうなるかなというのをやっていたので。そのいい方を決勝で使うという意識でした」

 予選より、リアクションタイムは0秒01速く、中盤からもうまく伸びて、向かい風0.3mで10秒16を出した。

「決勝では、山縣さんもケンブリッジさんも上げてくると思うので、自分ももう一段階ギアを上げていきたい」と言いながら、「去年は準決勝が2着で決勝もダメだったので、今回はそれだけはやめてこいと(コーチから)言われていました。それに今年は走るたびにシーズンベストに近いタイムが出ているので、いつもの日本選手権よりは自分のことに集中して走っている感じがあります」と笑顔を見せていた。

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