「長距離5冠」の第1弾を制しても、東海大が浮かぬ表情なのはなぜか? (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Osada Yohei/AFLO SPORT

 ゴール後、腰を折り、苦しそうに背中で息をする。10位でゴールした阪口はトラックに両手、両膝をつき、なかなか立ち上がれない。故障明けで万全ではなかった關は、一礼してトラックから待機場所に戻った。

 鬼塚は疲労困憊(こんぱい)という表情だった。

「いやー、悔しいですね」

 表情が歪む。

「自分が思い描いたレースは先頭で勝負して、昨年(2位)以上の形で終わりたかったんですけど、なかなかうまくいかなくて......悔しかった」

 それでもラスト1周では鬼塚らしいスピードを見せた。あのまま9番で終わるのと4番に入るのとではポイントが異なるだけでなく、これからのレースを考えても意味のあることだ。

「最後は正直いくしかなかった。前に集団がある以上は、スパートして負けても最低限ポイントを取りたかったんで、力を出し切って終わろうと思っていました。中だるみしたけど、最後はしっかりと上げることができたので、そこはいいんですが、もう少し中間を粘れていれば......」

 鬼塚の調子は悪くなかった。1週間前のセイコーグランプリでは3000mに出場し、7分57秒56で自己ベストを更新した。「その勢いでいきたかったんですが」と言うが、5000m、1万mと距離が長くなると「スタミナがもたない」と感じたという。

「これからジョグを増やして、走る距離を増やしていかないと後半厳しくなる。もっとレベルの高い試合だと、結構後ろだと思うんで満足はしていません」

 個人的に求めているものが高く、両角速(もろずみ・はやし)監督や西出コーチ、周囲から求められているものも高い。それだけに順位に踊らされることはないのだが、今回は団体戦でもある。「学生長距離5冠」を達成するための最初の関門がこの関東インカレで、鬼塚が最後に粘って獲得した5ポイントで1位を確実にした。

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