神野大地の初マラソンにみる「ハム&臀筋型と大腿四頭筋型」2つの走法 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text by Sato Shun photo by Nakanishi Yusuke/AFLO SPORT

 いったい神野の足に何が起こっていたのだろうか。

「福岡国際まで、蹴り上げてストライドを広げていく走りができるようにハムや臀筋の筋肉を十分に鍛えてきました。レースが終わった後、私の中ではマラソンを走ったのだからハムと臀筋がこのくらい張っているんだろうなっていうイメージがあったんです。でも、触ってビックリしました。ほとんど張っていなかったんです」

 それは、これまでのトレーナー経験からほとんどあり得ないことだった。

「これ以上無理というくらいつくったはずの筋肉が張っていないのは、2つの理由が考えられます。ひとつはそれ以上に筋肉がついている、もうひとつはまったく使っていない。神野は後者で、ほとんど使えていなかった。せっかくV8のエンジンに載せ替えたのに使っていない。ただ、それであのタイムだったので、使っていたらもっとすごいところ(順位)にいくのにとチクリチクリと言ったんですが......そこは大きな課題になりましたね」
 
 春から筋肉をつくり、蹴り上げを意識し、フォームを変えてきた。練習での走りでは鍛えてきた筋肉を使えている手応えも感じていた。なぜ、本番のレースで使われなかったのか。中野はこう言い切る。

「ガチガチに緊張した影響ですね。実は絶対に緊張するだろうなって思って、アップの時に走りがおかしかったら指摘しようと思っていたんです。チェックした時、ちょっと緊張している走りをしていたけど、修正してトラックを走った時はよくなっていた。

 でも、いざスタートしたらフォームがまたおかしくなっていた。緊張すると前の筋肉を使いたくなるんですが、10km過ぎてもまだ緊張していたので、必然的に大腿四頭筋を酷使していました。大腿四頭筋は他の下肢の筋肉に比べ持久性が低いので、その時点で限界に近かった。そこでハムや臀筋を使う走りに切り替えることができたらよかったけど、それもできなかったんです。

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