才媛ランナー鈴木亜由子の選択。東京五輪「マラソンのエース」はあるか (5ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimiphoto by Nakamura Hiroyuki/PICSPORT

 そんななか、レース後に高橋尚子氏と話す機会があったという。

「高橋さんもマラソンをやり始めてから5000mの自己ベストが出たと話してくれたので、それもありなのかなと思って......。ただ、今回走ってみて『トラックもまだまだできる』という思いもあるし。今までと違うことをやるのは嫌いではないので、決めつけてしまうのではなく、いろんな考えやいろんな方法で選択の幅を広げていきたいなとも思います」

 ロンドン世界陸上の女子マラソンを見れば、レースは35kmまで5km17分台後半のスローペースで進み、そこからいきなり16分16秒までスピードが上がった。それを考えれば、マラソン練習をしながらも、渋井陽子(三井住友海上)が持つ1万mの日本記録(30分48秒89)を出すくらいの走力が必要なことは明らかだ。この渋井の日本記録は、01年世界選手権のマラソンで4位になった翌年5月にマークされたもの。彼女はその後、04年のベルリンマラソンで2時間19分41秒の日本記録も出している。

 ただ、鈴木は今25歳。これからマラソン練習を開始するとしても、本当にマラソンでメダルを狙いにいけるのは、32歳で迎える東京の次の五輪かもしれない。

「自分がこういう風にやりたいと言えば、高橋昌彦監督もいろいろな方法論を持っているので、いいものを提案してくれると思います。だから、あとは自分がどれだけ本気になって、覚悟を決めて取り組めるかだと思います」

 こう言い切った鈴木。今大会の結果には納得できないところもあったが、彼女にとっては本気で次への覚悟を決めるきっかけの大会となった。

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